脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

まとめ(あとがき) 階層構造

00)まとめ(あとがき) 受信装置としての脳について、三つの章にわたって述べてきた。だが、発信装置としての身体構造、身体機能についてはあまり述べていない。これは、この本の目的が、脳と脳の機能、脳の歴史的変化にあったからではある。 であっても、生物…

第四章 運動(行動)の発達と階層性 12)運動の発達 運動の構造と機能 12-5-1)機能分化

運動の構造と機能 12-5-1)機能分化 手の指が1本1本独立して動き、物をつかむ、という運動は、ヒトやニホンザルなどの霊長類だけが持つ、きわめて高次な運動機能である。哺乳類の動物であっても、手と足の機能分化が進んでいなければ、このように手指を使うこ…

第四章 運動(行動)の発達と階層性 12)運動の発達 意識的行動の指示経路

意識的行動の指示経路 12-4)大脳新皮質前頭前野が運動をイメージ(脳内リハーサル、シミュレーション)すると、大脳新皮質前頭葉運動野が企画して、小脳(運動プログラム)が細かい動きを提示し、大脳基底核(中間管理職)が実行部隊に指示を出して、脊髄や脳幹が…

第四章 運動(行動)の発達と階層性 12)運動の発達 生得的無意識的反射的運動 12-3-1)リズム的パターン発生機構

生得的無意識的反射的運動 12-3-1)リズム的パターン発生機構 母体内の胎児の段階から、手足を屈伸させたり、ばたつかせたりする。これらは、生まれつき備わっている生得的な運動で、無意識的反射的自動的運動である。 これらを実現実行するのは脊髄や脳幹で…

第四章 運動(行動)の発達と階層性 12)運動の発達 運動の階層性 12-2-1)視線の転換

運動の階層性 12-2-1)視線の転換 脳幹の中脳の上丘は、視線を対象に反射的に向ける機能がある。この反射的行為を抑えるのは難しい。がしかし、不可能ではない。意識的に訓練をすると、この反射的に視線を向ける行動を抑えられる。この行為を抑えるのは、前頭…

第四章 運動(行動)の発達と階層性 12)運動の発達

第四章 運動(行動)の発達と階層性 12)運動の発達 12-0)このセクション(節)では 今まで、脳の階層性と、知の階層性を解説して来たが、ここでは、運動、行動、反射行動の階層性について解説して行きたい。とは言っても、既に、随所で、言及して来たので、まと…

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 11-8-3)言葉の限界  

11-8-3)言葉の限界 人間は、感覚情報を受け取る。そして、それを知性情報として言葉化している。しかし、感覚情報と言葉化した知性情報との間には、なんら必然性はない。それらは恣意的な結び付きでしかない。だのに、人間は余りにも言葉に頼り過ぎる。そろ…

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 11-7)知の行動化(知行合一)

11-7)知の行動化(知行合一) (1)「前頭前野」が目標(計画)を作成して、 (2)やるぞというGOサイン(意欲)が出た時点で、積極性に踏み出す「帯状回前部」が前向きになって (3)その目標が好きな事柄かどうかを大脳辺縁系「扁桃体」が判断して、扁桃体もGOサインを出し …

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 意志と願望

意志と願望 11-6-1)意志とは 意志とは、自分の心を、自覚的に、能動的に、制御しながら一定方向へ向け続ける心の働きである。長期的継続的トップダウン注意は志向性を持った意志と言える。つまり、意志とは、志向性を持った継続的注意である。 前頭前野は、…

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 好奇心、意欲、動機 11-5-1)興味(関心)、好奇心

好奇心、意欲、動機 11-5-1)興味(関心)、好奇心 注意や興味(関心)に関わる脳部位は、前頭前野や頭頂連合野にある。ここから帯状回前部(インターフェイス機能)を介して注意(関心など)のトップダウン指令が、下位の感覚系領域(視床など)に送られる。その結果返…

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 注意と意識(能動性、受動性) 11-4-2-4)積極的注意と受動的意識

11-4-2-4)積極的注意と受動的意識 目標を検出する努力感(積極的注意状態)が、帯状回前部の活動を伴うのとちょうど逆に、例えば、目覚めて頭がぼんやりしているような思考を空にして受動的意識状態にすることは、帯状回前部の活動停止を伴う。 つまり、帯状回…

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 注意と意識(能動性、受動性) 

注意と意識(能動性、受動性) 11-4-1)脳の働きと注意 脳は、断片的、要素的な情報から、部分的な統合を繰り返しながら、複雑な総合的、統合的な全体像を形成してゆく。あたかもジグソーパズルを完成させるかのように。 注意は、そのように全体像を形成して行…

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 自意識(自己意識、自我意識)から内省へ 11-3-1)自意識、自己意識、自我意識 

自意識(自己意識、自我意識)から内省へ 11-3-1)自意識、自己意識、自我意識 時々に刹那刹那に上がって来る欲求に従って動くのでは、とても浅い動きでしかない。深い、意味深い行動を選び取るには、自身の中に存在する知的資源を知らねばならない。それには、…

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 知性から精神へ 11-1)知行合一

知性から精神へ 11-1)知行合一 私は、上で述べたように、精神機能の一つであるべき知性を、精神から切り離した。というのは、知性は図書館(知の集合体)である。知性は行動する競技場にはなり得ない。 王陽明(中国明代の儒学者、哲学者、高級官僚、武将)は言…

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 知の階段

11)精神、性格、意志、注意、理性知の階段 11-0)この本全体のテーマ(主題)の一つが、階層構造である。そして第三章のテーマが、情報(知)の発達と階層性である。人間においては、脳内の情報(知)の発達と、心の成長発達とは、並行しているというか、脳内の情報…

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 10-6)知性とは

10-6)知性とは ある男性が、脳腫瘍で左右の前頭前野が手術によって切除された。知能が高かったその男性は、手術後も、知性レベルにほとんど変化はなく、記憶も損なわれず、言語活動や運動能力にも変わりがなかった。要するに、IQは、前頭前野切除後も低下し…

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 思考(言語の進化:コミュニケーション言語⇒独り言⇒思考) 10-4-1)意思疎通言語⇒独り言⇒思考 

思考(言語の進化:コミュニケーション言語⇒独り言⇒思考) 10-4-1)意思疎通言語⇒独り言⇒思考 言語は、外界(社会)に向けては、コミュニケーションの手段である、と述べた。内界(心の中)に向けては、思考の手段である。考えるとは、内的作業である。とは言え、図…

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 言語 10-3-6-1)人の脳内言語構造

10-3-6-1)人の脳内言語構造 人の場合には、耳で聞いた声は、聴覚神経によって脳幹(視床)に伝わる。その後大脳新皮質側頭葉の聴覚野に伝えられる。ここで初めて音が語音(言語音)として認識される。つまり、音を言語として分類する。更に、側頭葉の別の部位で…

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 言語 鳥のさえずりと言語 10-3-5-1)鳥と人の共通点 

鳥のさえずりと言語 10-3-5-1)鳥と人の共通点 人と同じように、多種多様な音(声)を出すことができて、個体同士が声でコミュニケートするのは、鳥類の鳴禽類だけである。といえば、たちどころに、犬や猿も多様な鳴き声を持ち、声に感情を乗せる、と反論が来そ…

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 言語 10-3-1)言語とは

言語 10-3-1)言語とは 言語の種類としては、聴覚的な音声、視覚的な文字、だけではなく、視覚的な身振り言語、触覚的な点字などがある。これらの感覚的なものから、具体性(聴覚性、視覚性、触覚性)を捨て去って抽象化したものが、言語一般(感覚性を伴う言語…

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 10-1)右脳と左脳

10)知性、言語、思考、意識10-1)右脳と左脳 脳の情報処理の仕方は、右脳と左脳とでは大きな違いが生まれる。左半球(左脳)は、分析的、系統(継時)的、時間的、直列的、デジタル的である。 それに対して、右半球(右脳)は、包括的、全体的、空間的、並列的、ア…

第三章:情報(知)の発達と階層性 9)情動、感情、情緒 感情の成長 

感情の成長 9-6)誕生時には、身体感覚的な、満足(快)、苦痛(不快)だけであり、反応も、様々な感覚情報への刹那的な個別的機械的反射のみであった。つまり、反応は、身体内外から来る快不快の感覚への都度都度の反応に過ぎなかった。 だが、自我という(心の中…

第三章:情報(知)の発達と階層性 9)情動、感情、情緒 9-4)情緒とは

9-4)情緒とは 情緒を、私は上で定義したが、改めて述べ直すと、もっぱら積み重ねてきた知性や経験に強く裏打ちされた気持ち(感情)であると。例えば、感動、尊敬、義憤、畏敬、畏怖などなど。狭義の感情も、部分的には、動物、特に社会生活を営む猿や類人猿と…

第三章:情報(知)の発達と階層性 9)情動、感情、情緒 感情

感情 9-3-1)無意識的感情と意識的感情 辞典では、生理学的には、感情には、身体感覚に関連した無意識な感情と、意識的な感情とに分類されていた。 (1)無意識感情は、扁桃体、視床下部、脳幹に加えて、自律神経系、内分泌系、骨格筋などの末梢系が関与する。…

第三章:情報(知)の発達と階層性 9)情動、感情、情緒 情動 9-2-1)情動とは

情動 9-2-1)情動とは 情動とは、怒り、恐れ、喜び、悲しみなどなど、比較的急速に引き起こされた一時的で急激な(1)感情と(2)身体的動き、である。つまり、情動とは、感情が直接原因で引き起こされた体(身体内外に向かった)の動き、である。ある感覚刺激に対…

第三章:情報(知)の発達と階層性 9)情動、感情、情緒 9-1-1)感情とは

9)情動、感情、情緒9-1-1)感情とは 感覚情報と体内情報が、心の中で生のまま(加工を施されない段階で)感じ取られたものが感覚で、それを基に個人的主観的評価(判断)を加えたものが感情である。感情は、多種多様の感覚情報を一つにまとめる働きがある。9-1-2)…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 ピアジェ認知発達論(3)

(4)右脳が様々な感覚情報を統合して一つのまとまったイメージ(犬、女性など)を形成し、左脳がそれを言語化(タグ付け)する。そして、右脳のイメージと左脳の言語が、脳梁を介して一つに結ばれる。 (5)その結果、次の段階である左脳主体での言語(デジタル)を用…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 ピアジェ認知発達論(2)

(3)象徴機能(イメージ)を使って遊ぶことができるようになる。本物の自動車から積木を自動車と見立て、更には、頭の中での視覚的イメージに置き換えていく。このように実際のものが目の前になくても、感覚情報で構成されたイメージ(心像)を心の中に再現して、…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 思考の始まり、感覚情報からイメージ、そして言語へ 8-9)感覚情報から言語使用までの流れ ピアジェ認知発達論(1)

思考の始まり、感覚情報からイメージ、そして言語へ 8-9)感覚情報から言語使用までの流れ ピアジェ認知発達論を先に述べたが、再度提示する。 (1)誕生後、赤ん坊は反射行動(吸う、触れる、注視するなど)によって、身の周りの物を感覚的に知っていくこと(知覚…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-8-3)意識は心を上下する

8-8-3)意識は心を上下する 例えば、催眠は、意識を潜在意識段階に誘導する。普段の目覚めた意識では、到達し得ない深みにまで降りることを可能にする。このように意識は、心の中を上下する。睡眠時や瞑想時や催眠時には、覚醒時よりも意識レベルは下がってい…