脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 脳幹が強く関与する機能 3-1-3)睡眠(レム睡眠、ノンレム睡眠)

脳幹が強く関与する機能
3-1-3)睡眠(レム睡眠、ノンレム睡眠)
睡眠は、脳幹が大きく関わっているので、ここで説明する。なお、夢については、「8)感覚」の所で説明する。
呼吸や心臓は、死ぬまで休むことなく動き続ける。つまり、生命維持に関わる脳幹は睡眠中でも働いている。しかし、大脳(大脳新皮質大脳辺縁系)など、脳の生命維持には関係ない部分はノンレム睡眠時には休む。
睡眠の内で、レム睡眠を起こす中枢は、主に中脳(眼球反射)と橋と延髄である。それに対して、ノンレム睡眠は、間脳(視床下部)と大脳基底核(運動調節)である。
「ノンレム睡眠」時には、脳の完全休息(勿論完全停止ではなく、アイドリング)状態である。その時は、身体的には副交感神経が優位になり、心拍数、体温、代謝などが低下する。また、大脳皮質の活動も低下する。脳も体も休憩中である。その時には、感覚入力は、視床が阻止して閉ざし大脳皮質には向かわない。運動指令に関しては、脳幹によって阻止される。
それに対して、「レム睡眠」中の脳は、目覚めに近いものの、体が眠っている。脳は、体を自律神経(脳幹に所属の間脳にある視床下部)に権限委任して、大脳皮質の方は情報整理に専念集中する。具体的には短期記憶を整理して、その固定や消去を行う。レム睡眠時には感覚入力は末梢段階で閉ざされる。つまり、外界の感覚情報の流入は阻止し、既に脳内にある感覚情報の処理に脳が専念する。
感覚入力は、睡眠の段階によって、閉ざされる、阻止されるレベルが異なっている。であっても、感覚入力は、完全に遮断されることはない。身体機能に関しては、橋(脳幹に属す)で運動神経に強い抑制が起こる。
このように、睡眠に関しては、中心(中枢)として働くのは、脳幹である。
なお、睡眠中の犬の脳波を調べた過去の研究によって、犬たちにも人と同じように、眠りの深いノンレム睡眠と、浅いレム睡眠の状態があることがわかっている。
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