6-2)神経回路の先天性と後天性
脳の機能(働き)は、単独で機能することはなく、必ず上で述べたように構成された神経細胞のネットワーク(神経回路)により担われる。その神経回路は、早くも胎生期に遺伝的プログラムによりごく大まかに形成され始める。
特に、大脳皮質よりも下位に位置する神経細胞(例えば脳幹など)では、つまり、大脳皮質に向けて情報を発信するものは、初めから生得的に配線(軸索が目的地にまで伸びて行くこと)されている。
だが、大脳皮質内部の、細胞と細胞の間の配線は可塑性(変化する可能性)に富み、生後の「経験」によって新しい配線がどんどんと敷設されていき新しい回路が出来上がる。あるいは、経験によって配線が急速に改変再編新装される。そのようにして、生得的配線(神経回路)は、新しい配線と繋ぎ直しなどによって成熟した大きな回路になる。
赤ん坊が、驚異的な速さで成長して行くのは、基礎工事(生得的回路形成)が次から次へと完成して行った後を追いながら、経験を積むことによって複雑に再編統合される回路再編機構のお陰である。神経回路は、赤ん坊だけでなく何歳になっても経験や学習によって絶えず改変される。
注)大脳新皮質は、形成時には白紙状態であり、大部分が経験によって、そこに知がどんどんと投入され、眠っている間に、自動的に整理整頓(自己組織化)されて行く。
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