6-7)神経回路は階層間を上下に縦断
神経回路形成については、同じ階層間でシナプス形成をするだけではなく、様々な異なる階層に属す領域が、一つのまとまりを作って大きな機能が産み出される。
そのことを「注意」を例に取って見よう。脳のいくつかの領域が一つの回路でつながったときである。
(1)大脳新皮質視覚野(対象の視覚情報を処理する神経細胞の集まり)、
(2)脳幹視床(関係する処理領域にトップダウン注意を差し向ける役割)、
(3)大脳新皮質前頭連合野(作業記憶装置、作業テーブル、目標設定)、
(4)大脳新皮質頭頂葉(自分と対象の相互関係を位置づける地図)
がチームを組んで処理に当たる。これは階層間、領域間を跨いだ神経回路といえる。しかも、連携される領域はこれだけに留まらない。手という触覚を使うならば、更に更に連携する領域は拡大する。
これは単に神経回路というよりも、神経回路網と言った方がよいだろう。
しかし、誕生時から、生得にこのような神経回路が形成されているのではなく、経験によって成長とともに、徐々に軸索(配線)が目的の神経細胞、神経回路とシナプス形成されて行くものである。
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