脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-9)神経回路の可塑性

6-8)神経回路形成の個性
シナプス形成における個人差は、その開始や完成の時期などや、それにかかる時間の長さや早さだけでなく、できる回路そのものが人によって異なる回路も多々ある。シナプス形成としてつながる回路のでき方が、一人ひとりの育ち方(経験差)である。どのような回路ができるかが、一人ひとりの今後の大脳新皮質を中心とする精神活動としての人格、性格、感情、思考、行動等を左右する。シナプス形成(すなわち、神経回路形成)はすべての人間にすべて同じようにできることは決してなく、個人によって大きく異なるものであり、その個人差が、その人間の生き方パターンとしての個性となる。
6-9)神経回路の可塑性
例えば、視覚機能は、人でも動物でも、生後急速に発達して、複雑な神経回路網を形成する。どういう回路を作るかは、大まかなところは種が持っている遺伝子が決める。この遺伝子は動物種によって異なる。しかしながら、細かなところは、感受性期の経験から得られる情報によって決まる。生得的本能の上に後天的経験知が重層する。本能の上に知性が重層する。
とは言っても、生物種で、進化的に、系統発生的に、初期にある種では、この感受性期が短かったり、なかったりして、誕生後の経験を取り入れないで、生得的本能(誕生前に形成され固定された神経回路)だけの種もある。逆に、進化的に遅く生まれた種(高等生物)程、本能よりも後天的経験知が重要性が増して行く。
注)人間は、生得的本能の上へ積み上げられた後天的経験知が、生得的本能を大きく凌駕する。人間以外で、後天的経験知が生得的本能を大きく凌駕する種は現れていない。ただ、人間に育てられ、人間から授けられた経験知で、野生では獲得できない神経回路が多く形成されることはままある。とは言っても、それは潜在的構造を持っているからこそ可能なのである。
つまり、遺伝子によって、予め定められた生得的プログラムに基づいて初歩的神経回路が形成される。その後、その形成済みの神経回路が主導する形で、後天的経験を元に周りの神経細胞を巻き込んで神経回路を拡張して行く。言い換えれば、生得的神経回路は、経験を餌にどんどんと周りの神経細胞を仲間に引き入れて拡大再生産して行く。
15歳頃までに、全ての神経系の髄鞘化と神経回路がおおよそ整い、成人の脳に達する。経験や周りの環境に対応して、 必要なシナプスの強化と不必要なシナプスの除去が起こる。それとともに、 学習と経験によって、情報の伝達能力が多様に変化して、 個々人に適した機能的な神経回路が作られる。
注)シナプスの過剰形成が完了した後、シナプスの刈り込みが始まるころに、環境からの情報が入らないと、神経回路が正常に形成されない。これを感受性期と言う。
子供の頃に、腕白で、朝早くから晩遅くまで夢中で、遊び回り、走り回り、泥だらけ、傷だらけになった者が、後々大物になっているかもしれない。子供の頃は、基礎作り期である。種蒔きの時期である。机上の知的経験では、多種多様な神経回路の形成が期待できないように感じる。

脳のネットワーク

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