脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-3)ピアジェ心理学(認知発達論)

7-3)ピアジェ心理学(認知発達論)
7-3-1)マズローの欲求階層説は、(社会)生活全般を見ての理論だが、スイスの心理学者ピアジェの認知発達論は、文字から見てわかるように認知に限定している。しかも「誕生から思春期頃まで」の、「ものの見方と行動様式の発達」を提示している。

(1)感覚運動期(0~2歳)
(2)前操作期(象徴的思考期)(2~4歳)、直観的思考期(4~7、8歳)
(3)具体的操作期(7~11歳)
(4)形式的操作期(9歳~11、12歳)

7-3-2)ピアジェ心理学(認知発達論)の解説
それぞれの段階の特徴を述べたい。
(1)感覚運動期(0~2歳)。
最初は感覚系、即ち、五感主導の認知(知覚、判断、解釈)が発達する。感覚運動期が、誕生後~24ヶ月(2歳まで)続く。この時期に、永続性(瞬間からの解放、時間の獲得)と表象機能(目の前にないものを思い浮かべる能力)を獲得する。だが、それであっても使いこなすまでには至らず、主として目の前にある物への感覚機能、少ない経験から形成された感覚情報を利用して、刹那的な受信と発信を行う。経験を積んで2歳の終わり頃に、新しい認知機能の使用時期に入る。
注)「イナイイナイバア」で、幼児が笑えるのは、表象機能が働いている証である。イナイイナイで、不安(緊張)から固唾をのみ、バアで、安堵(弛緩)から笑いが出る。
(2)前操作期(2歳~7、8歳)が、感覚運動期の後に続く。表象は、目の前にないものを心の中に思い浮かべることだったが、単に思い浮かべるだけではなく、更には象徴機能(現実に、今ここにない物事を他のものに置き換えて表現する働き)を使いこなせるようになる。
その結果、ごっこ遊びや、言葉(今ここにないものを言葉に置き換えて)の使用が始まる。ごっこ遊びは右脳優位であり、言葉の使用は左脳優位である。
象徴機能が使いこなせるようになった後、4歳頃から直観的思考(感覚機能と経験からの情報主体の判断、4~7、8歳)が始まる。まだ理由を挙げて説明できない直感(大脳新皮質の未成熟のため)だが、過去の経験からの、情報を使っての判断できるようになる。やがて初期的な推論(前頭前野からの判断)が芽生える。こうだからこうだ、という理由を挙げての判断ができるようになる。
(3)具体的操作期(7歳~11、12歳)に入って、学校での学習によって、科学的概念が獲得されて、論理的思考(言語を用いた左脳主体の思考)が確立する。だが、まだ経験が浅いため、感覚的右脳的(感覚に囚われている)思考が主体となり、つまり、時間や空間的な制約に縛られており具体性が必要となる。「自分の」感覚知覚情報だけですべてを判断する傾向がいまだ残り、自分を離れて他者の視点や立場(客観的視点)に立つことが今のところできない。
(4)形式的操作期(12歳~)は、最終段階の抽象的思考、仮説的思考が可能となる。つまり、抽象的とは、言語を中心として心の中(外部情報がなくても)だけでの純粋(具体物がなく言語や記号だけ)な思考の段階に入る。前頭前野は、現実体験をするのではなく、場面、出来事を想定して、再現したモデルを用いて分析するという、シミュレーション機能を備えている。脳内でシミュレーションができるように成ったのである。

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