脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第四章 運動(行動)の発達と階層性 12)運動の発達 生得的無意識的反射的運動 12-3-1)リズム的パターン発生機構

生得的無意識的反射的運動
12-3-1)リズム的パターン発生機構
母体内の胎児の段階から、手足を屈伸させたり、ばたつかせたりする。これらは、生まれつき備わっている生得的な運動で、無意識的反射的自動的運動である。
これらを実現実行するのは脊髄や脳幹である。両者には、様々な反射的なリズム的パターン発生機構が存在する。例えば、延髄には呼吸リズム、脊髄には歩行リズムを発生させるパターン発生機構が存在する。これは、単純なパターン(型)をリズム(周期的な反復)として組み合わせる、持続的な運動パターンである。
脊髄や脳幹段階の無意識の(反射的)行動は、単純な動作である。が、小脳段階の無意識の行動は、極めて複雑な技巧的な動作も可能である。例えば、ピアノ演奏など。この小脳を土台として、大脳新皮質からの随意運動(学習された運動)が積み上げられる。
12-3-2)小脳による自動修正
意識が関与しない、潜在的に知覚された情報は、本人が随意的には制御できない無意識的な自動的反応を引き起こす。例えば、意識にのぼらない視覚情報によって、小脳による運動反応のプログラムが自動的に修正される。
12-3-3)危険性のレベル別対応
別の例を挙がれば、熱いものに触れた手を瞬間的に引っ込める場合は、手を引っ込める運動は、熱いと感じて危険を察知するよりも前に開始されている。そして、その後に熱さを感じる。
これを脳的に言えば、危険を感じないレベルであれば、皮膚での触感覚が大脳新皮質感覚野(頭頂葉)に到達した後、そこから随意(前頭葉運動野)で行動指令が出されて骨格筋(脊髄)が反応する。つまり、脳(大脳新皮質)がちょっと熱いから、手を引っ込めようと判断して行われた意識的行動である。
しかし、驚くほどの熱さ(この熱さレベルは経験によって引き上げることは可能)であれば、皮膚からの感覚情報が脊髄に到達した段階で、直接筋肉に生得的反射行動をさせる。勿論感覚情報は、同時に大脳新皮質にも送られるので、大脳新皮質が遅れて熱さを体感する。