脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 1)階層構造1-1)「階層構造」の基本型 (後半部分)

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)
1)階層構造
1-1)「階層構造」の基本型

8)矛盾的自己同一(二項対立):(1)〜(7)をまとめて一言で言った表現(白と黒、運動と静止、明と暗のように、相対立する一対の概念)。宇宙は、この一組になった二項の矛盾的自己同一が、振り子のように行きつ戻りつしながら、諸行無常(万物流転)をしている。
例えば、ゴムは、引っ張れば伸びるし、手を離せば縮む。つまり、ゴムは伸びる性質と同時に縮む性質をも併せ持つ。伸ばせば伸ばすほど、縮もうとする力が増して来る。その力が均衡するのが中庸である。磁石は、プラスの性質とマイナスの性質を併せ持ち、磁石を真ん中で切り離しても、分けられたそれぞれに、プラスの性質とマイナスの性質とを併せ持ち、どちらかの性質だけを持たせることはできない。

9)(多層・多重)階層構造、重層構造、ツリー構造
進化とは、1)~7)の左項へ進むと同時に、階層が高く(深く)成って、つまり、多層化、重層化して行くことである。進化が進むとは、階層の多層が増して行くことである。
脳が典型的事例である。それぞれの階層は、異なった機能を分業して分かち持ち、それでいて、全体(全階層)は統合されている。部分は完全に独立しているわけでもないが、かといって完全に従属(依存)しているわけでもない。微妙なバランスの上にある。矛盾的自己同一である。

10)階層間でも同一階層内でも、常に情報・物質・エネルギーなどの相互作用、相互やり取り、円循環(リサイクル・輪廻)が継続する。
多層な階層構造でありながら、全体がまとまっているのは、相互作用があるからである。物であれ事であれ、外見上静的に見えたとしても、実際は一瞬たりとも静止しない動的変化状態にある。これを「動的平衡」という。
これは、エントロピー増大の法則を考慮すれば理解できる。このエントロピー増大の法則は、例外なくあらゆるものに働く。生きるということは、エントロピー増大の法則に「あらがう」ことである。
生物は、自らの最低構成要素である細胞を生産し続けることによって生き続け、細胞を生産できなくなれば死ぬ。自らの構成要素を自家生産する自己生産システムを身体内に持つ。これをオートポイエーシス(自己生産)という。
生物は、自身の中に、自身を再生産することができる能力(機能)とそれを可能とする情報(遺伝子:設計図)を持っている。
脳は、情報を最低構成要素として、情報を階層構造的に組み上げる自己生産システムなのかもしれない。
いずれ、AIは、目的を与えると、目的に沿って、情報を自己生産する存在となるのではないか。