脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その五)

3-2-3-3)大脳皮質主導から小脳主導へ上で述べたことをあらためて順序立て(四段階に分け)て詳しく解説する。 (1)フィードバックによる慎重な練習 試行錯誤の練習中には、大脳(新皮質)が中心になって(主導権を握って)、大脳(大脳新皮質前頭葉内運動野)が、随意…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その四)

3-2-3-1)小脳と運動 そこで採用された方式が、最初はコーチ付きのフィードバック方式で練習を重ね、慣れて来たら、フィードフォワード方式を採用するというやり方である。 つまり、脳が、技巧とか、速さが要求される運動を実行するに際して採用する方法は、…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その三)

3-2-2)フィードバックとフィードフォワード 私たちが、自身の身体を使って行う運動で、スピードを要求される行動においては、大脳によるフィードバック制御(返って来た結果を見てから次を計画実行)では絶対に要求に応えられない。 かといって、前向き制御(フ…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その二)

3-2-1-2)人の小脳の階層的構成 人の小脳形成は、胎生の6ヶ月の終り頃には一応完成する。小脳の髄鞘形成は胎生7ヶ月頃から起こり、生後5~8ヶ月頃には完了する。 小脳の神経組織は、魚類から哺乳類に至る脊椎動物全般にほぼ共通した構造を持つ。しかし、全く…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その一)

3-2)小脳3-2-1-1)小脳の構造 人の脳では、小脳だけでも1,000億以上の神経細胞がある。神経細胞は、情報処理に特化した細胞である。小脳が属している中枢神経全体の神経細胞の数は1,000億と2,000億の間(およそ1,400億個)と推定される。その7割が小脳にありと…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 脳幹が強く関与する機能 3-1-5)呼吸の特殊な二重性

3-1-5)呼吸の特殊な二重性 呼吸中枢は、「延髄」にあり、そこでは、呼吸の自律的なリズムと呼吸筋収縮のためのパターンを生成する。更にその上にある橋が、呼と吸とのリズムを担う。つまり、呼吸行為は単純ではないので、個々の動きを個別に延髄が担い、それを…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 脳幹が強く関与する機能 3-1-4)昼夜の区別と生物時計

3-1-4)昼夜の区別と生物時計 間脳の視床下部前方にある「視交叉上核」(約4万5000個の神経細胞で構成)に、生理機能(睡眠も含めて)にリズムを与える生物時計(体内時計)が存在し、生後半年程でそれが働き始める。これによって、昼夜の区別がはっきりして来る。 実…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 脳幹が強く関与する機能 3-1-3)睡眠(レム睡眠、ノンレム睡眠)

脳幹が強く関与する機能 3-1-3)睡眠(レム睡眠、ノンレム睡眠) 睡眠は、脳幹が大きく関わっているので、ここで説明する。なお、夢については、「8)感覚」の所で説明する。 呼吸や心臓は、死ぬまで休むことなく動き続ける。つまり、生命維持に関わる脳幹は睡眠中…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 神経、神経系 3-1-1-1)自律神経

神経、神経系3-1-1-1)自律神経 末梢神経の一つである、自律神経は、内臓、血管などの体内の働きを制御し、体内の環境を整える神経である。すべての内臓、全身の血管や分泌腺を支配している。自律と言う言葉が付くことで分かるように、意識しなくても、自動(…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 神経、神経系 3-1-1-0)末梢神経と中枢神経

神経、神経系3-1-1-0)末梢神経と中枢神経 神経(道路や線路のような情報の通り道)には、全身に網の目のように張り巡らされている(1)「末梢神経」と、そこを介して集められた情報を集積して処理する(2)「中枢神経」とに別けられる。このように神経系は、集中化と分…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 3-1-0)脳幹の構成

3-1)下位脳部位(脳幹)3-1-0)脳幹の構成 仕事に関して、日本(外国の事情を知らないが)では、大きな事業では特に、仕事を分割して、下請けに下ろす。例えば、孫請け、ひ孫請けなどと言われ、系列企業に仕事を下ろす。 それと同じように、脳でも、仕事を細分化…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分3-0-7-1)脳部位の機能喪失順序 3-0-7-3)酒による脳への影響

3-0-7-1)脳部位の機能喪失順序3-0-7-3)酒による脳への影響 血液流入停止は、脳部位の機能停止が速いが、お酒の脳への影響は、血液停止による速い影響とは少し異なる。なお、長期間での慢性的影響ではなく、その時(飲酒時)だけの短期的影響である。 (1)網様体…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-7-1)脳部位の機能喪失順序 3-0-7-2)脳への血流停止

3-0-7-1)脳部位の機能喪失順序 建設があれば、崩壊もある。ここでは、脳機能の崩壊を述べたい。 脳が、階層構造的に積み上がっている様を構造面と機能面で示したが、何らかの原因によって、逆に脳機能が停止していく様子を二例示す。 3-0-7-2)脳への血流停止…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理3-0-6-5)理性

3-0-6-5)理性 とは言っても、科学的知が人類を幸福にするとは限らない。最先端の科学技術によって建設された原子力発電所が、幾度となく、人々を恐怖に陥れて来た。 その知性を上から俯瞰するのが理性である。理性とは、「全体的な統一と総合の能力」である。…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理3-0-6-4)知性

3-0-6-4)知性 知性は、知識であり、ある事項について知っていることである。つまり、断片的知識を知っていることである。 感情が色濃くまとわり付いている知性(経験的情報)を、コンプレックス(何らかの感情によって、感情を核として統合されている心的内容の…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理3-0-6-3)感情から知性へ

3-0-6-3)感情から知性へ 身体内部では、五感や体全体の様々な神経や諸器官からの情報がどんどんと絶え間無く心(脳)になだれ込んで来る。その刻々となだれ込む全情報を取捨選択し秩序化しなければ、たちどころに情報に溺れてしまう。溢れ来る感覚情報に押し流…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 3-1-1-2)体性神経系

3-1-1-2)体性神経系 末梢神経には、自律神経以外にもう一つあり、それは体性神経系と呼ばれ、骨格筋(運動神経、発信系)や感覚器官(知覚神経、受信系)に分岐している。この神経系は、大脳皮質に直結(直属)しているので、自分(大脳皮質)の意志(随意)によっても…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理 3-0-6-2)感情

3-0-6-2)感情 脳の中で、感情の形成に関わる部位のうち、一番重要なのは「扁桃体」(大脳辺縁系)である。感情には、扁桃体が下した評価、つまり好きか嫌いかに振り分けられた統一的評価を、体に伝える機能(メッセージ)がある。好ましい対象には好意的な快の感情…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理 3-0-6-1)感覚

四種類の情報処理 3-0-6-1)感覚 感覚は、種類としては、身体(諸器官)が感じ取った、触覚、温覚冷覚、痛覚、内蔵感覚、平衡感覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚などなどがある。なお、感覚という語には、「機能」(感じ取るという働き)とその結果手に入れた感覚「情報」…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-6)脳の情報処理面での階層構造

3-0-6)脳の情報処理面での階層構造 上で、脳の構造的進化、すなわち、古い部位に新しい部位が上に乗っかる形で重層するという形での進化を見て来た。ここからは、その構造にはどんな機能が立ち上がってきたのかを見ていきたい。最初に情報がどのような性質な…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分3-0-5)胎児の脳の成長(後半部分)

具体的には、7ヶ月目頃から聴覚系言語中枢(左脳の側頭葉の感覚性言語中枢:ウェルニッケ野)が発達し始める。それを受けて、胎内で胎児は、母親の心音(心臓の鼓動)や声や周りの音声を聞いている。 聴覚は誕生前から機能しているが、視覚は誕生後から発達し髄鞘…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分3-0-5)胎児の脳の成長(前半部分)

3-0-5)胎児の脳の成長 上「3-0-2-2:脳進化の粗略」で、脳の系統発生(進化の歴史)を述べてきたが、ここでは主に脳神経の個体発生を述べたい。特に母体内での発生を中心にして。個体発生は、系統発生を大まかになぞるように、構造が形成されて行く。 注)「個体発…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-4)大脳は、機能的には、新皮質系、辺縁系、基底核系の3つに分けられる 3-0-4-4)大脳より下の脳幹

3-0-4-4)大脳より下の脳幹 大脳基底核が、外へ向けての行動化を制御する拠点であるが、脳幹(間脳、中脳、橋、延髄)は、呼吸、心臓の拍動、体温調節など、身体内部の、主に自律神経を中心として無意識に行われる「生命維持」において重要な部位である。 脳幹内…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-4)大脳は、機能的には、新皮質系、辺縁系、基底核系の3つに分けられる 3-0-4-3)大脳基底核

3-0-4-3)大脳基底核 大脳基底核では、線条体、淡蒼球、黒質、視床下核などから構成される。その働きは、人においては、運動調節の働きを主にしている。人では、大脳基底核が、大脳皮質(大脳新皮質と大脳辺縁系)と協調して随意運動の調整(随意と不随意の橋渡…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-4)大脳は、機能的には、新皮質系、辺縁系、基底核系の3つに分けられる 3-0-4-2)大脳辺縁系

3-0-4-2)大脳辺縁系 魚類ではすでに大脳辺縁系の片鱗が見られる。大脳辺縁系は、大脳基底核の上に覆いかぶさるように存在する。 大脳辺縁系は、古皮質(海馬、脳弓、歯状回)、旧皮質(嗅葉、梨状葉)、中間皮質(帯状回、海馬回)、皮質下核(扁桃体、中隔、乳頭体…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-4)大脳は、機能的には、新皮質系、辺縁系、基底核系の3つに分けられる。 3-0-4-1)大脳新皮質

脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-4)大脳は、機能的には、新皮質系、辺縁系、基底核系の3つに分けられる。 3-0-4-1)大脳新皮質 大脳新皮質は、人においては、認知(知覚)、運動制御、記憶、判断、理性(人間的判断)などの広い意味での「知性」を司る。…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 大脳の構造的区分 3-0-3)大脳は三つの部位に区分される (3)大脳基底核

(3)大脳基底核 大脳基底核は、大脳皮質(新皮質+辺縁系)と、視床、脳幹を結びつけている神経核(神経系の分岐点や中継点となっている神経細胞群)の集まりであり、皮質(神経細胞層)を形成していない。上位階層の大脳皮質と下位階層の脳幹(視床も脳幹に属す)を…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 大脳の構造的区分 3-0-3)大脳は三つの部位に区分される (2)白質

(2)白質 白質は、大脳皮質の下にある「神経線維」の束、即ち神経細胞の「軸索」が密集する領域、である。軸索に巻き付く髄鞘が白いので白質と呼ばれる。それに対して、灰白質は神経細胞本体部分が密集する層で、「白質」はそこから伸びる「軸索が密集する層」(配線層…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 大脳の構造的区分 3-0-3)大脳は三つの部位に区分される (1)大脳皮質(灰白質)

(1)大脳皮質(灰白質) 大脳の内の、大脳皮質(灰白質)とは、大脳の外側の表面に広がる、神経細胞の灰白質の薄い層(厚さ数ミリの薄い層)で、ニューロンの「神経細胞体」(本体)が集中して存在する部分である。 注)(大脳)皮質とは、神経細胞が規則正しい層構造をな…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 大脳の構造的区分 3-0-3)大脳は三つの部位に区分される

大脳の構造的区分 3-0-3)大脳は三つの部位に区分される 大脳=(1)大脳皮質(灰白質)+(2)白質+(3)大脳基底核。 これを更に詳しく表示すると、 大脳=終脳=左右の大脳半球(右脳と左脳)=灰白質+髄質(白質[有髄線維層]+大脳基底核)。 では次にそれらの脳部…