3-0-5)胎児の脳の成長
上「3-0-2-2:脳進化の粗略」で、脳の系統発生(進化の歴史)を述べてきたが、ここでは主に脳神経の個体発生を述べたい。特に母体内での発生を中心にして。個体発生は、系統発生を大まかになぞるように、構造が形成されて行く。
注)「個体発生は系統発生を繰り返す」と、ドイツの生物学者が唱えた。この説には批判も多い。
2ヶ月目頃には脳の基礎が出来上がり、その頃までに「脊髄」の神経細胞が完成する。更には、脊髄の神経細胞の軸索が手足の末端まで伸び、筋肉と結合する。これによって、体を曲げたり手足を屈伸させたりができる。このように、脳にある神経細胞から軸索が伸びて、目的の器官、筋肉、細胞などとシナプス接続することで、情報のやり取りができるようになる。
3ヶ月目頃から「大脳」が発達し始める。この頃には脳幹の神経細胞の形成はほぼ完了している。大脳の皮質は、4ヶ月目頃までに形成が終わる。つまり、5ヶ月頃までは「神経細胞の数」が増加する時期である。
更に、誕生頃までが、神経細胞からの「樹状突起や軸索が伸展」する時期である。
触覚、温度感覚、痛覚、味覚などの皮膚表面にある感覚は、構造が複雑な聴覚や視覚よりも発達が早い。触覚に関しては、口唇、鼻、舌、手、足へと順に発達する。この事実は系統発生を考えると、合点が行く。魚類には手も足もない。といっても、ヒレが背中、胸、尾についているが。