脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

2020-01-01から1年間の記事一覧

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 大脳新皮質感覚系 聴覚と視覚

5-5-2)聴覚 聴覚の神経系には、胎生7か月になると聴覚が完成する。母体内に響く音だけでなく、おなかの外から響いてくる音(音域にかなり制限がある)をも聞き取ることができるようになる。視覚系と同じように、出生直後から髄鞘形成が始まるが、側頭葉の一次…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 大脳新皮質感覚系

大脳新皮質感覚系 5-5-0)一次感覚野から髄鞘化 体性感覚、視覚、聴覚などの感覚情報が、最初に大脳に入る一次領域(一次感覚野)やその近くの領域は早くに髄鞘化される。大脳新皮質感覚野は、一次感覚野から数次感覚野を経て高次感覚野へと情報が高度に集約さ…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 大脳辺縁系(情動)

大脳辺縁系(情動) 大脳の髄鞘形成は大部分が生後に始まる。 5-4-1)帯状回 情動の中枢となるのは、扁桃体であるが、それと結び付きが強い大脳辺縁系の帯状回に髄鞘形成(髄鞘化)が起こり始めるのが、誕生後2~3ヶ月目ぐらいであり、10ヶ月目頃には、帯状回の髄…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 感覚(運動)系(脊髄と脳幹を中心として) 5-3-3)脳幹

5-3-3)脳幹 胎生5ヶ月頃には脊髄や脳幹の軸索が髄鞘化し始める。生後2歳頃までに、末梢神経(体性神経)の髄鞘化は完成している。胎児期(誕生前)に下部脳幹まで髄鞘化が完成しており、上部脳幹の髄鞘化が生後上方向へ進む。 生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 感覚(運動)系(脊髄と脳幹を中心として)

脳部位や機能別髄鞘化の進行 感覚(運動)系(脊髄と脳幹を中心として) 5-3-1)感覚性神経と運動性神経 各種感覚器官から中枢へと向かう求心性(感覚性)神経や、系統発生学(生物進化の歴史)的に古い領域では髄鞘化が早い傾向がある。例えば、脊髄神経には機能的に…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 反射行動から随意運動へ

反射行動から随意運動へ 5-2-3)赤ん坊は、運動系の神経の髄鞘形成(髄鞘化)が進むに従って、寝返り、はいはい、立っち、歩行と、次から次へと運動機能を獲得して、2歳頃までに、基本的、要素的な運動機能が確立してくる。 5-2-4)1歳~2歳で発生する、指先…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 5-2-1)胎児期(誕生以前)の髄鞘化

5-2-1)胎児期(誕生以前)の髄鞘化 胎児期4~5ヶ月で脳神経の髄鞘化が始まる。具体的には、胎児5ヶ月頃からは脳幹部(いくつかの脳部位の集まりなので全体が同時進行ではないので既に部分的には開始されている)や脊髄(脳幹よりも取り掛かりは早い)の軸索がミエ…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 髄鞘化の形成される順序

髄鞘化の形成される順序 5-2-0-1)深部(下部)から表層部(上部)へ 神経細胞の髄鞘形成の開始時期は、部位によって大いに異なる。一般に、深部の白質に始まり、表層部の白質はそれよりも1~2ヶ月程遅れる。髄鞘形成が完成するのも深部ほど早い。つまり、底から…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) (その二)

5-1-3)髄鞘化 もう一つの仕組みを脊椎動物が採用した。それは、軸索の髄鞘(ミエリン)化である。それによって無髄(髄鞘化されていない)神経線維よりも、同じ太さならば、五倍から百倍も更には数百倍も伝達速度が速くなる。つまり、髄鞘化の最大の目的は、単位…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) (その一)

5)髄鞘化(ミエリン化)このセクション「5)髄鞘化(ミエリン化)」では、脳の成長成熟の第一段階である、軸索の髄鞘化(ミエリン化)に限定して、話を進めて行く。 5-1-1)生物の生存環境 動物にとって、餌を取るために、また敵から逃げるために、外界(環境)から取り…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-3)胎児の脳

4-3)胎児の脳 母体内の胎児の脳が、全ての胎児で定まった構造に出来上がっていくのは、脳を形成する設計情報が遺伝子に全て書き込まれているからである。その遺伝情報が、流れ作業のように次から次へと順序立って現れ出(発現)して行くからである。 4-4)脳の…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-2-3)第二段階は神経回路(網)の形成

4-2-3)第二段階は神経回路(網)の形成 髄鞘化の次の段階が、「神経回路の形成」である。言い換えると、 シナプス(接合部)形成=神経回路の形成=神経細胞の組織化(集団化)である。 個々の神経細胞は、各自から線(軸索)を一本伸ばして、お互いにシナプスを介して…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-2-1)二段階の成長成熟 4-2-2)第一段階は髄鞘化

4-2-2)第一段階は髄鞘化 脳内では、構造が出来上がってまず最初に取り掛かる段階は、神経の「髄鞘化(エミリン化)」である。つまり、個々の神経細胞の成熟である。具体的に神経細胞が成熟するとは、神経細胞本体の成熟ではなく、そこから伸びる軸索(神経線維)(…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-2-1)二段階の成長成熟

4-2-1)二段階の成長成熟 さっそく本題に入って行くが、脳や神経は、誕生時には構造的にはほぼ完成しているのに、なおかつ未完成、未成熟とは、どういうことだろうか。その答としては、成長成熟は、次の二段階を踏んで発展して進んで行く、ということである。…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-1)脳は成長成熟する

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟4)脳の成熟順序4-1)脳は成長成熟する 前書きで述べたように、生まれたばかりの赤ん坊が、新しい行動が次から次へとできるようになるのは、結論から言えば、脳の成長成熟による。とはいっても、勿論行動に移すために…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-4)前頭連合野、前頭前野 3-4-4-2-3)前頭前野を更に細分化、五区分

3-4-4-2-3)前頭前野を更に細分化、五区分 上の三区分と被る区分でもあるが、外側を更に背側と腹側とに分け、内側をも更に背側と腹側(これは三区分の腹側と同じ)とに分け、新たに前頭前野内の前頭前野とも言うべき前頭極を加える。 (1)背外側部、 (2)腹外側部…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-4)前頭連合野、前頭前野 3-4-4-2)前頭前野の機能分化

3-4-4-2)前頭前野の機能分化 3-4-4-2-1)脳部位の位置関係 上では前頭前野の情報面での全般的な役割を述べたが、ここでは、前頭前野を機能別に分けて述べたい。 その前に、前頭前野内での脳部位の位置関係を説明すると、 (1)より前方の部位はより抽象的かつ高…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-4)前頭連合野、前頭前野

3-4-4)前頭連合野、前頭前野 3-4-4-1)前頭前野と情報 前頭連合野(前頭前野)には、全ての感覚情報と体内情報が集まる。そういう点から、前頭前野は、大脳新皮質の他の脳部位よりも階層が上であることがわかる。 前頭前野に入るそれらは、高度に加工処理された…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-3-1)ミラーニューロン

3-4-3-1)ミラーニューロンとは 前頭葉運動前野と頭頂葉の接する部位など複数部位に、「ミラーニューロン」が存在する。それは、他者の行動を見て、まるで自分がそれと同じ行動をとっているかのような反応をする、鏡の向こうに映る相手が自分であるかのような反…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-2)頭頂葉

大脳新皮質の主要脳部位3-4-2)頭頂葉 大脳新皮質は、左脳と右脳とに分かれている。その内で、右側(右半球、右脳)頭頂葉が、自分自身を中心にして、「自分の周り」の空間や物体の位置、形などの外部情報の処理をする。 それに対して、左側(左半球、左脳)頭頂葉…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-1)大脳新皮質の構成

3-4)大脳新皮質3-4-1)大脳新皮質の構成 大脳は、三つの脳部位から構成され、一番下に大脳基底核(行動担当)、その上に大脳辺縁系(記憶、判断担当)、最上階に大脳新皮質(知性と企画担当)、三重構造に成っている。 大脳新皮質の前半部は、情報発信(表出)を受け…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-5)側坐核

3-3-5)側坐核とは 動物が、ある行動を取ったときに、その行動が生存競争にとって有利な結果に導かれた場合には、腹側被蓋野(脳幹中脳、衝動や欲望を司りドーパミンを分泌)からのドーパミン神経系が、扁桃体(感情的判断)、側坐核(行動化)、帯状回(自分事化、…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-4)帯状回 (その五)

3-3-4-6)帯状回を経由して自分事として体験 知識(知性)として認知するのは、大脳新皮質(特に後部)の機能である。ところが、自分事(気持ちが動く感情体験)として体験するのは、前部帯状回の機能である。例えば、前部帯状回が損傷すると、痛みが何処でどの程度…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-4)帯状回 (その四)

3-3-3-5)帯状回と大脳辺縁系との関係 上で既に述べたが、あらためて、帯状回は、情動に深く関わっている大脳辺縁系の各部位を結びつける役割を果たす。つまり、大脳辺縁系のまとめ役的存在である。例えば、海馬などの記憶系、扁桃体などの情動系との結合が強…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-4)前頭連合野、前頭前野 3-4-4-2-2)前頭前野の機能三区分

3-4-4-2-2)前頭前野の機能三区分 前頭前野を三区分(外側、内側、腹側)する。 (1)外側部は認知、実行機能。 外側部は、「ワーキングメモリー(作業記憶)」、反応抑制、行動の切り替え、プラニング(長期計画)、推論(論理的思考)などの知性(理性)の認知、実行機能…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-4)帯状回 (その三)

3-3-3-4)帯状回前部、前部帯状回、前帯状回 前部帯状回(24、32、33野)は、後部と同様、認知と情動のインターフェイス、相互作用、統合機能として働く。 前部帯状回は、背側部 (24野)と腹側部(32野)が含まれている前頭前野と頭頂葉(空間情報)、前頭運動系(運…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-4)帯状回 (その二)

3-3-4-3)帯状回後部 例えば、認知課題において、欲求、意欲が継続する中で、つまり、結果次第で報酬(金銭、食べ物、報酬など)が得られる状況で、しかも報酬は仕事終了後の場合には、帯状回後部は活性化(門戸開放)したままになる。 帯状回は、注意の配分、再…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-4)帯状回 (その一)

3-3-4)帯状回(帯状皮質=前部帯状回+後部帯状回) 帯状回は、きちんと確定した、全体を包括する用語が生まれていない。おおよそ大脳新皮質の底辺部に張り巡らされている。 3-3-4-1)帯状回の構造 帯状回は、脳梁(左右脳を連結する配線群)の周囲(前から上をお…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-3-0)海馬とは (その二)

3-3-3-3)トップダウン型記憶装置 例えば、単語や電話番号、名前、人名、花種類などを覚えたりといった、意識を介したトップダウン型顕在記憶(自分の意思で記憶して思い出せる記憶)は、海馬で処理され意識的な操作が可能な記憶(タグ付けされた)として一時保存…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-3-0)海馬とは (その一)

3-3-3-0)海馬とは 3-3-3-1)海馬と扁桃体の関係 海馬は、想像上の生物、龍に似たタツノオトシゴの様な形をしていて、扁桃体と同様に側頭葉の内側に左右に一つずつ存在する。 扁桃体と海馬は位置的に近接しているが、扁桃体が、「表現と行動」という発信面に重き…