脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

2020-01-01から1年間の記事一覧

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 扁桃体 (その三)

3-3-2-4)扁桃体と他の脳部位との関係 上で扁桃体と側頭葉の連携を説明したが、更に敷衍して脳的に説明し直すと、扁桃体へは、あらゆる感覚連合野(内臓感覚も含む、つまり、身体内外)からの全情報が流れ込む。その情報をすべて統合して、さらに過去からの記憶…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 扁桃体 (その二)

3-3-2-3)扁桃体内の役割分担 扁桃体の中でどんな反応をするかを担当する部位が内容によって異なる。例えば、敵との遭遇で、戦う反応、逃げる反応、固まる反応を担当する部分などに分かれる。あるいは、食べられるものに反応し、食べられないものに反応しない…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 扁桃体 (その一)

大脳辺縁系に属す主要脳部位 ここからは、大脳辺縁系の個々の脳部位について述べて行く。 3-3-2-1)扁桃体とは 大脳辺縁系の一部である「扁桃体」は、側頭葉内側の奥に左右(右脳と左脳)一つずつ存在する、アーモンド形の、2cm程の神経細胞の集まり(神経核)であ…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 (その三)

3-3-1-2)大脳辺縁系の機能 大脳辺縁系の内で、海馬は「記憶の形成」に、扁桃体は「情動の形成と発現」に関わる。側坐核は、「新皮質が作った計画や目標を行動化へと促す」機能を有する。 極々大まかに言うと、大脳基底核までが、どのように運動するか(運動方法)に…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 (その二)

3-3-0-1)進化の停止 人が開発する製品でも上記の進化の停止の理由が該当する。例えば、コンピュータの記憶装置に関して、フロッピーディスクが、ソフトケースからハードケースへ、次に箱型のHDDドライブへと変化し、今はクラウド式が主流を占めるようになっ…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 (その一)

3-3)大脳辺縁系(3-3-0)辺縁系は動物に共通な機能 下等な哺乳類(例えば、ネズミ)では、大脳辺縁系が大脳の大部分を占めている。更に下位に位置する爬虫類にとっては、大脳辺縁系は最高脳部位(最高、最終決定機構)である。 とは言っても、哺乳類ならば、更にそ…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その七)

3-2-3-4)脳部位を示して説明 自我の位置から言うと、自分が意識的(随意)に運動する時、意思指令は大脳皮質連合野(前頭前野)から出される。それが高次運動野に送られると、不随意運動(様々な反射運動)を統合的に調整し、随意運動を微調整する、実行部隊指揮官…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その六)

(4)プログラムを基に運動を調整 このようにして、一旦小脳が完成した運動プログラムとして記憶してしまうと、小脳は、自らが主導権を取って、全身の筋肉の働きを互いに協調的に動くように大所から監視指示し、また巧妙で機敏な動きへとプログラムに基づいて…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その五)

3-2-3-3)大脳皮質主導から小脳主導へ上で述べたことをあらためて順序立て(四段階に分け)て詳しく解説する。 (1)フィードバックによる慎重な練習 試行錯誤の練習中には、大脳(新皮質)が中心になって(主導権を握って)、大脳(大脳新皮質前頭葉内運動野)が、随意…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その四)

3-2-3-1)小脳と運動 そこで採用された方式が、最初はコーチ付きのフィードバック方式で練習を重ね、慣れて来たら、フィードフォワード方式を採用するというやり方である。 つまり、脳が、技巧とか、速さが要求される運動を実行するに際して採用する方法は、…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その三)

3-2-2)フィードバックとフィードフォワード 私たちが、自身の身体を使って行う運動で、スピードを要求される行動においては、大脳によるフィードバック制御(返って来た結果を見てから次を計画実行)では絶対に要求に応えられない。 かといって、前向き制御(フ…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その二)

3-2-1-2)人の小脳の階層的構成 人の小脳形成は、胎生の6ヶ月の終り頃には一応完成する。小脳の髄鞘形成は胎生7ヶ月頃から起こり、生後5~8ヶ月頃には完了する。 小脳の神経組織は、魚類から哺乳類に至る脊椎動物全般にほぼ共通した構造を持つ。しかし、全く…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その一)

3-2)小脳3-2-1-1)小脳の構造 人の脳では、小脳だけでも1,000億以上の神経細胞がある。神経細胞は、情報処理に特化した細胞である。小脳が属している中枢神経全体の神経細胞の数は1,000億と2,000億の間(およそ1,400億個)と推定される。その7割が小脳にありと…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 脳幹が強く関与する機能 3-1-5)呼吸の特殊な二重性

3-1-5)呼吸の特殊な二重性 呼吸中枢は、「延髄」にあり、そこでは、呼吸の自律的なリズムと呼吸筋収縮のためのパターンを生成する。更にその上にある橋が、呼と吸とのリズムを担う。つまり、呼吸行為は単純ではないので、個々の動きを個別に延髄が担い、それを…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 脳幹が強く関与する機能 3-1-4)昼夜の区別と生物時計

3-1-4)昼夜の区別と生物時計 間脳の視床下部前方にある「視交叉上核」(約4万5000個の神経細胞で構成)に、生理機能(睡眠も含めて)にリズムを与える生物時計(体内時計)が存在し、生後半年程でそれが働き始める。これによって、昼夜の区別がはっきりして来る。 実…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 脳幹が強く関与する機能 3-1-3)睡眠(レム睡眠、ノンレム睡眠)

脳幹が強く関与する機能 3-1-3)睡眠(レム睡眠、ノンレム睡眠) 睡眠は、脳幹が大きく関わっているので、ここで説明する。なお、夢については、「8)感覚」の所で説明する。 呼吸や心臓は、死ぬまで休むことなく動き続ける。つまり、生命維持に関わる脳幹は睡眠中…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 神経、神経系 3-1-1-1)自律神経

神経、神経系3-1-1-1)自律神経 末梢神経の一つである、自律神経は、内臓、血管などの体内の働きを制御し、体内の環境を整える神経である。すべての内臓、全身の血管や分泌腺を支配している。自律と言う言葉が付くことで分かるように、意識しなくても、自動(…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 神経、神経系 3-1-1-0)末梢神経と中枢神経

神経、神経系3-1-1-0)末梢神経と中枢神経 神経(道路や線路のような情報の通り道)には、全身に網の目のように張り巡らされている(1)「末梢神経」と、そこを介して集められた情報を集積して処理する(2)「中枢神経」とに別けられる。このように神経系は、集中化と分…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 3-1-0)脳幹の構成

3-1)下位脳部位(脳幹)3-1-0)脳幹の構成 仕事に関して、日本(外国の事情を知らないが)では、大きな事業では特に、仕事を分割して、下請けに下ろす。例えば、孫請け、ひ孫請けなどと言われ、系列企業に仕事を下ろす。 それと同じように、脳でも、仕事を細分化…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分3-0-7-1)脳部位の機能喪失順序 3-0-7-3)酒による脳への影響

3-0-7-1)脳部位の機能喪失順序3-0-7-3)酒による脳への影響 血液流入停止は、脳部位の機能停止が速いが、お酒の脳への影響は、血液停止による速い影響とは少し異なる。なお、長期間での慢性的影響ではなく、その時(飲酒時)だけの短期的影響である。 (1)網様体…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-7-1)脳部位の機能喪失順序 3-0-7-2)脳への血流停止

3-0-7-1)脳部位の機能喪失順序 建設があれば、崩壊もある。ここでは、脳機能の崩壊を述べたい。 脳が、階層構造的に積み上がっている様を構造面と機能面で示したが、何らかの原因によって、逆に脳機能が停止していく様子を二例示す。 3-0-7-2)脳への血流停止…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理3-0-6-5)理性

3-0-6-5)理性 とは言っても、科学的知が人類を幸福にするとは限らない。最先端の科学技術によって建設された原子力発電所が、幾度となく、人々を恐怖に陥れて来た。 その知性を上から俯瞰するのが理性である。理性とは、「全体的な統一と総合の能力」である。…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理3-0-6-4)知性

3-0-6-4)知性 知性は、知識であり、ある事項について知っていることである。つまり、断片的知識を知っていることである。 感情が色濃くまとわり付いている知性(経験的情報)を、コンプレックス(何らかの感情によって、感情を核として統合されている心的内容の…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理3-0-6-3)感情から知性へ

3-0-6-3)感情から知性へ 身体内部では、五感や体全体の様々な神経や諸器官からの情報がどんどんと絶え間無く心(脳)になだれ込んで来る。その刻々となだれ込む全情報を取捨選択し秩序化しなければ、たちどころに情報に溺れてしまう。溢れ来る感覚情報に押し流…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 3-1-1-2)体性神経系

3-1-1-2)体性神経系 末梢神経には、自律神経以外にもう一つあり、それは体性神経系と呼ばれ、骨格筋(運動神経、発信系)や感覚器官(知覚神経、受信系)に分岐している。この神経系は、大脳皮質に直結(直属)しているので、自分(大脳皮質)の意志(随意)によっても…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理 3-0-6-2)感情

3-0-6-2)感情 脳の中で、感情の形成に関わる部位のうち、一番重要なのは「扁桃体」(大脳辺縁系)である。感情には、扁桃体が下した評価、つまり好きか嫌いかに振り分けられた統一的評価を、体に伝える機能(メッセージ)がある。好ましい対象には好意的な快の感情…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 四種類の情報処理 3-0-6-1)感覚

四種類の情報処理 3-0-6-1)感覚 感覚は、種類としては、身体(諸器官)が感じ取った、触覚、温覚冷覚、痛覚、内蔵感覚、平衡感覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚などなどがある。なお、感覚という語には、「機能」(感じ取るという働き)とその結果手に入れた感覚「情報」…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分 3-0-6)脳の情報処理面での階層構造

3-0-6)脳の情報処理面での階層構造 上で、脳の構造的進化、すなわち、古い部位に新しい部位が上に乗っかる形で重層するという形での進化を見て来た。ここからは、その構造にはどんな機能が立ち上がってきたのかを見ていきたい。最初に情報がどのような性質な…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分3-0-5)胎児の脳の成長(後半部分)

具体的には、7ヶ月目頃から聴覚系言語中枢(左脳の側頭葉の感覚性言語中枢:ウェルニッケ野)が発達し始める。それを受けて、胎内で胎児は、母親の心音(心臓の鼓動)や声や周りの音声を聞いている。 聴覚は誕生前から機能しているが、視覚は誕生後から発達し髄鞘…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-0)脳の階層構造的進化 脳部位の機能的区分 大脳の機能的区分3-0-5)胎児の脳の成長(前半部分)

3-0-5)胎児の脳の成長 上「3-0-2-2:脳進化の粗略」で、脳の系統発生(進化の歴史)を述べてきたが、ここでは主に脳神経の個体発生を述べたい。特に母体内での発生を中心にして。個体発生は、系統発生を大まかになぞるように、構造が形成されて行く。 注)「個体発…