脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生)  3-1)下位脳部位(脳幹) 脳幹が強く関与する機能 3-1-5)呼吸の特殊な二重性

3-1-5)呼吸の特殊な二重性
呼吸中枢は、「延髄」にあり、そこでは、呼吸の自律的なリズムと呼吸筋収縮のためのパターンを生成する。更にその上にある橋が、呼と吸とのリズムを担う。つまり、呼吸行為は単純ではないので、個々の動きを個別に延髄が担い、それを上位から橋が統合統制する。
ところが、呼吸筋は、随意性の骨格筋(主に横隔膜および肋間筋)であり、体性神経系の運動神経から支配を受ける。
ということで、呼吸運動は、
(1)橋から延髄にかけて脳幹系の制御よる無意識な自律的運動と、
(2)意識的に呼吸を制御する大脳(前頭葉運動野)からの随意的運動の二重構造となっている。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つに分類されることは前に述べた。肺に分布する自律神経は、呼吸運動の場合、吸息時には交感神経が優位に、呼息時には副交感神経が優位に働く。
また、筋肉には横紋筋と平滑筋とがあり、横紋筋は主に骨格筋を、平滑筋は主に内臓の筋肉などを構成する。
横紋筋は随意筋であるので、中枢神経支配により、意志(随意)により動かすことが出来る。ところが、平滑筋は不随意筋であり、自分の意志では動かすことが出来ない。
呼吸筋(横隔膜や肋間筋)は、随意筋である横紋筋であるにもかかわらず、例外的に自律神経の支配を受けている。従って、自分の意志で動かすことが可能であると伴に、さらには無意識下でも自律的に動くことが出来るのである。
故に、呼吸は無意識で行う呼吸と、深呼吸や発声などの意識的に行う呼吸という二重性を持つ。
こういう事実から、つまり、呼吸に関しては、随意によって不随意を間接的に制御する方法が存在することになる。だから昔から、呼吸法が生まれて来たのだろう。呼吸を制することで、間接的に、身体を戦闘モード(交感神経優位)から休息モード(副交感神経優位)へと切り替えていく。つまり、バタフライ効果である。
注)バタフライ効果とは、最初の、非常に些細な小さなことが、次々と様々な要因を引き起こし、次第に大きな現象へと変貌することを指す。