脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

2021-01-01から1年間の記事一覧

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-6-6)デフォルト・モード・ネットワーク

8-6-6)デフォルト・モード・ネットワーク 実は、ボーッと過ごしている時でも、実際には脳の中ではいろんな雑念や想念が浮かんでは消えていて、それなりにエネルギーを消費している。ぼーっとしている時に、突如として名案が浮かんだりするのも、この働きによる…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-6-4)ミラーニューロンの活性化

8-6-4)ミラーニューロンの活性化 他者への共感に関連する部分である側頭頭頂接合部(ミラーニューロン)が大きく活性化する。この領域は、自他の区別や心の理論(他者の心を類推し、理解する能力、4歳後半から5歳で獲得する)と関わる役割を担っている。 8-6-5)G…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-6-2)情報の蛇口、視床

8-6-2)情報の蛇口、視床 視床は、感覚情報の管理人で、入ってきた感覚情報の一部を脳内深く(大脳新皮質)に送り込み、他の情報の侵入を阻止する。全てを同時に送り込んでしまうと、情報であふれ返り混乱を招く。だから、視床が情報を絞り込んで、必要な情報だ…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 瞑想、坐禅 8-6-1)大脳新皮質の情報処理の停止

瞑想、坐禅 8-6-1)大脳新皮質の情報処理の停止 瞑想は、言語的思考を止めて、あるいは、ある対象(呼吸や炎など)に集中して、心を無にする態度である。この意識を集中させ続ける行為は、前頭前野の前頭極の機能である、という。瞑想での集中は、能動的なもの…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 感覚遮断 8-5-1)感覚遮断実験

感覚遮断 8-5-1)感覚遮断実験 感覚遮断実験の参加者は、「何もしないことには耐えられない」という。人間は、さまざまな刺激を求め、ある程度、常に脳を活動状態に置いておきたい。人は何も刺激がない状態では気が狂いそうになり生きていけない。 では、感覚遮…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-4-2)脳幹での複合的反射行動

8-4-2)脳幹での複合的反射行動 脊髄だけが反射行動を取るのではなく、それよりも上位の脳部位でも反射行動を実行する。 例えば、目(網膜)に入った視覚情報は、分岐して、一部は、視蓋(脳幹中脳)と、上丘(脳幹中脳)へと伝えられ、そこで反射運動を起こす。上…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 感覚情報の行動化(反射行動) 8-4-1-1)生得的反射

感覚情報の行動化(反射行動) 8-4-1-1)生得的反射 反射とは、特定の感覚入力情報(例えば、痛覚)が、定型的な身体反応を引き起こす行動である。例えば、押しピンを踏んでしまった瞬間、思わず痛いと足を引っ込めてしまう。この動作は反射行動である。感覚が入…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-3-2)扁桃体

8-3-2)扁桃体 大脳辺縁系に属している「扁桃体」は、味覚、嗅覚、内臓感覚、聴覚、視覚、体性感覚など外的内的な感覚情報を、嗅球や脳幹から直接的に受けている。しかも、視床を介して間接的に感覚情報を受信する。つまり、扁桃体は、感覚情報を、直接的(感覚…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-3)感覚と関連する脳部位

8-3)感覚と関連する脳部位 8-3-1)視床、感覚情報の通用門 大脳辺縁系扁桃体の下位階層に位置する「視床」(脳幹内間脳の一部位)は、脳のほぼ中央に位置して、左右に一つずつあり、間脳のおよそ4/5を占める神経核の複合体である。 嗅覚を除き、視覚、聴覚、体性…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-2-7)構造としての感覚器官と機能

8-2-7)構造としての感覚器官と機能 上で述べたこれらのハードウェア(構造)としての感覚器官は、ほぼ誕生時には完成している。だが、ソフトウェア(機能)としての感覚情報(神経回路)の処理はそうではない。 例えば、生れつき目が見えなかった人が、視覚回復手…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-2-5)聴覚

8-2-5)聴覚 聴覚は、耳の感覚器官は、形(構造)としては、妊娠2ヶ月半までに形成される。つまり、視覚器官よりも早く機能し始める。更に神経が出来上がり、次に脳に情報が伝達される機能をもつのは胎生5ヶ月~6ヶ月後となる。つまり、その頃から胎児には骨伝…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 各種感覚受容器官 8-2-0)感覚とは 8-2-3)平衡感覚

8-2-3)平衡感覚 平衡感覚は、耳にある前庭器官(重力と直線加速度を司る感覚器官)からと他の感覚情報も加わって視床を介して小脳と大脳(複数の領野が関わる)へと送られる。小脳では、周りの状況を判断する大脳から送り出された、視覚や聴覚や触覚などと、筋肉…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 各種感覚受容器官 8-2-0)感覚とは

各種感覚受容器官 8-2-0)感覚とは 感覚とは、感覚器官を通して、対象の性質(色、音、匂い、味、肌触りなど)を感じた知覚(感覚情報を分析判断する機能)である。 ところで、目覚めている限り、視覚、聴覚、触覚、嗅覚などの感覚情報は、感覚器官から入って脳幹…

第三章:情報(知)の発達と階層性 8)感覚 8-1)ユングのタイプ論

8)感覚 8-1)ユングのタイプ論 ユングは、人の心の働きを、(1)方向と(2)働き(機能)という二つの面で分けた。 8-1-1)外向と内向 主に関心の向く方向を外界と心の中(内界)とに分けた。 (1)外向的な人は、外部の物事に興味関心が向く。周囲や現実に意識が向かい…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-6)仏教の教え「本来本法性、天然自性身」

7-6)仏教の教え「本来本法性、天然自性身」 この言葉「本来本法性、天然自性身」の主旨は、 本来すべてのものが法を具えた仏様(生まれたままに仏さま)なのである。すべては仏様が姿を変えたものだ。 それを見た道元禅師は、もともと「悟りの境地にあるならば、な…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-5)成長、進化へのきっかけ

7-5)成長、進化へのきっかけ 7-5-1)我慢とは、その階層で情報を留めて消費し切らず(行動に移さず)に、上位に情報を回して、そこで情報を処理させることである。最終、最高判断拠点とはならずに中継地の地位に退くことである。 だが、脳的には、そこが最高判…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-4)仏教の三界

7-4)仏教の三界 仏教では、三段階の世界を提示している。すなわち、欲界、色界、無色界の三つの世界。欲界が最下位にあり、無色界が最上に位置する。 (1)欲界。本能的欲望が盛んで強力な世界。動物も同じくこの欲望に動かされる。 (2)色界。本能的欲望は超越…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-3)ピアジェ心理学(認知発達論)

7-3)ピアジェ心理学(認知発達論) 7-3-1)マズローの欲求階層説は、(社会)生活全般を見ての理論だが、スイスの心理学者ピアジェの認知発達論は、文字から見てわかるように認知に限定している。しかも「誕生から思春期頃まで」の、「ものの見方と行動様式の発達」を…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-2-3)欲求階層説の具体的内容

7-2-3)欲求階層説の具体的内容 (1)生理的欲求(脳幹) (2)安全の欲求(大脳辺縁系、特に扁桃体) (3)社会的欲求/所属と愛の欲求(大脳辺縁系) (4)承認(尊重)の欲求(大脳新皮質、社会的能力) (5)自己実現の欲求(前頭前野)7-2-4)欲求階層説の解説 ここからは、五段…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 心の成長発達理論 7-2)欲求階層説

心の成長発達理論 7-2)欲求階層説 7-2-1)欲求階層説は、日本では余りにも有名な学説であるが、欲求の成長、人の欲求が、階層を登る過程を表示してある。この説は、人間性心理学の提唱者であるアブラハム・マズローが、人間行動の動機や人格を研究した結果得ら…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-1-3)論理思考と直感と直観

7-1-3)論理思考と直感と直観 (1)論理思考は、たいてい意識と注意内に照らし出された情報だけで結論を出す。というのは、思考は、トップダウン注意で知識を探しに行くからである。時間をたっぷりとかける思索(哲学)は別であるが。 (2)直観は、心の内部の情報…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-1-2)心と意識と注意

7-1-2)心と意識と注意 人の脳内状況には、大まかに三段階がある。 (1)まず最も広くて深い底辺階層(実は階層全体)が「心」である。ユングは、意識、無意識、集合的無意識、と心を階層構造として捉えた。個人の内部にあって、これら全てを包摂するものを心と、私…

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-0)身体の発達と心の成長

7)心の成長発達7-0)身体の発達と心の成長 身体の発達と、それを裏で支える「脳」の成長成熟。それを更に裏で支える「遺伝子」。ここまでは、時間が来れば自発自展する事柄であった。しかしながら、心は、自発自展するとは限らない。 であっても、心も、成長、成…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-9)神経回路の可塑性

6-8)神経回路形成の個性 シナプス形成における個人差は、その開始や完成の時期などや、それにかかる時間の長さや早さだけでなく、できる回路そのものが人によって異なる回路も多々ある。シナプス形成としてつながる回路のでき方が、一人ひとりの育ち方(経験…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-7)神経回路は階層間を上下に縦断

6-7)神経回路は階層間を上下に縦断 神経回路形成については、同じ階層間でシナプス形成をするだけではなく、様々な異なる階層に属す領域が、一つのまとまりを作って大きな機能が産み出される。 そのことを「注意」を例に取って見よう。脳のいくつかの領域が一…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-6)神経回路の時間的経過

6-6)神経回路の時間的経過 量的には6歳前後までに、その個人のシナプス形成の8割が形成される。1つの細胞が他の数十数百数千の細胞と連結形成をしていくという成長のピークは11歳~12歳半といわれる。 例えば、人の第一次視覚野のシナプス密度は、出生時に…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-5)神経回路の成長

6-5)神経回路の成長 成人に達すると、1個の神経細胞は、シナプスを介して、平均的には他の1,000個の神経細胞とつながりを持つようになる。 今成人(20歳)のシナプス形成を基準として考え、それを100%とする。3歳頃は、外世界での経験をそのまま取り込む模倣に…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-4)神経回路の重層性

6-4)神経回路の重層性 脳全体で1,000億個を大きく超える膨大な数のニューロン(神経細胞)が、個々に独立して機能を発揮しているのではなく、お互いに軸索を伸ばし、シナプスでつながりを持ち合って、神経回路を形成している。その神経回路同士が更に合体して…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 神経回路の形成と成長発達

神経回路の形成と成長発達 6-3)神経回路の形成とは 神経回路の形成とは、神経細胞同士のシナプス(接続部)形成であり、それは神経細胞の組織化(集団化)でもある。なお、シナプスとは、(神経)情報を出力(発信)する側と入力(受信)される側の間に形成された、情…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-2)神経回路の先天性と後天性

6-2)神経回路の先天性と後天性 脳の機能(働き)は、単独で機能することはなく、必ず上で述べたように構成された神経細胞のネットワーク(神経回路)により担われる。その神経回路は、早くも胎生期に遺伝的プログラムによりごく大まかに形成され始める。 特に、…