脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 心の成長発達理論 7-2)欲求階層説

心の成長発達理論
7-2)欲求階層説
7-2-1)欲求階層説は、日本では余りにも有名な学説であるが、欲求の成長、人の欲求が、階層を登る過程を表示してある。この説は、人間性心理学の提唱者であるアブラハムマズローが、人間行動の動機や人格を研究した結果得られた学説である。ではこれからそれについて、簡単に解説したい。
7-2-2)欲求階層説の三つの特徴
特徴として挙げられるのは、階層が上がるに連れて、
(1)「心の視野が、時間的にも空間的にも拡大」していく。構造的にも機能的にも粗くから細かくへと移行する。人は様々な経験を幅広く積むに連れて自然に心が広く深くなって行く。心は、経験、知識、情報の貯蔵倉庫である。
だが、その貯蔵倉庫に蓄積された情報を、どれだけ有効活用するかである。お金は貯めるのが目的ではなく、使用することに価値がある。無意識は意識よりも低い階層にある。だから、無意識(習慣、定型的判断と行動)に身を委ねることが多ければ、現状維持に留まる。意識は、ある意味、フロンティア(前途のある未開宅地)である。決定を急げは急ぐほど、過去の幼稚な判断機能が自動的に作動する。
注)無意識層には、過去の知識しか存在しないが、意識には、未来を見据える、未開拓の領域、新分野、最先端が存在するかも。
(2)「依存から自立を経由して、対等の相互依存関係へ」と向かう。更には社会からも自立して孤高を保つ。
現代社会では、20歳前後まで依存することが当り前になっている。集団としての社会一般は偏差値的には、50であるから、その平均値を大きく超え出ると、社会との摩擦から孤立する可能性が極めて高くなる。この段階では、孤高を保つ精神的強さが求められる。
依存とは、「外に頼るものを求める」ことである。つまり、外的なものによって充実をはかろうとするが、自立は、外に求めないで、出来るだけ自給自足的に充実をはかろうとする。勿論、一人の人間が自給出来る範囲は限られているから、自ずと相互依存関係になる。また、事実上物質面での完全自立は不可能に近いので、自立(自律)は精神面に限定される。しかし、Simple is beautiful.である。
(3)追求対象が、「物(物質:具体性)重視から心(精神:抽象性)重視へ」と移行して行く。欲求が、物質的欠乏感から発生する段階から、精神的欠乏感へと移行して行く、例えば、愛、承認、賞賛、名誉など。更には、精神的自立が確立して行くと、欠乏感からではなく、徐々に精神的充足感を期待して行動する。欠乏は、基本的にはマイナスをゼロにしようとするが、充足は、ゼロをプラスにしようとする気持ちから生まれる。
最終的には、行動することによって得られる精神的喜び(達成感、充実感、満足感など)のみが追求される。階層構造では、上昇するに連れて普遍性、抽象性が高くなる。これは求める対象においても妥当する。
注)真の自立とは、相手から何も期待しない。故に、何も得られなくても失望しない。そういう心境にあることである。何も期待しないで相手に何かをしてあげることは、無償の愛である。であっても、精神的充実感などが得られる。

マズローの欲求階層説

マズローの欲求階層説

組織行動論の考え方・使い方 -- 良質のエビデンスを手にするために

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  • 発売日: 2020/09/11
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完全なる人間 [第2版]:魂のめざすもの

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