脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 7)心の成長発達 7-5)成長、進化へのきっかけ

7-5)成長、進化へのきっかけ
7-5-1)我慢とは、その階層で情報を留めて消費し切らず(行動に移さず)に、上位に情報を回して、そこで情報を処理させることである。最終、最高判断拠点とはならずに中継地の地位に退くことである。
だが、脳的には、そこが最高判断拠点として行動に移しても、情報が上に上がっていることが多い。だから、落ち着いたら、フィードバック情報から、後悔したり、反省したり、落ち込んだりする。つまり、後悔、反省、落胆は、更に上位階層が生まれている証である。
それらが繰り返されることで、情報(経験)が上位階層に蓄積され、次第に上位階層での判断が自動化するようになる。
ところが、我がままは、その後の後悔、反省、落ち込みがないので、上位階層が空っぽで同じことの繰り返しになり成長しない。上位階層の経験蓄積がいまだないことの証である。
注)上位階層であっても、下位階層よりも、経験的蓄積が上回らなければ、主導権は握れない。それまでは単なる情報貯蔵庫に過ぎない。
7-5-2)このように、継続できずに挫折(とその後の落胆、後悔、反省)することが人を進歩させる。とはいっても、自然に自動的に進歩する分けでは決してない。つまり、挫折点が、上への進歩と下への退歩への分岐点になる、ということである。その分岐点で、後悔、反省する(フィードバック情報を意識が吟味する)ことが、上位階層に情報を蓄積させることになる。逆に転落する場合も有り得るが、それは、他人に責任を転嫁することから生まれる。自分に責任があると判断すれば、その責任の取り方を学び、考える必要がある。だから、もし親ならば、子供の失敗を叱るだけでなく、その失敗を乗り越える方法を考えさせる方向へと持って行かねば、子供の成長は望めない。
7-5-3)学校では、新しい方法を学ばせ、それを習得させ習熟させる。習熟後に、その方法では解決できない新しい課題を提示して学習者を挫折に追い込む。その後、やおら新しい解決方法を提示する。そういう指導方法を採用している。
だが、最近では、現時点の知識では解決できないような課題を提示して、新しい解決方法をも学習者本人に模索させるという発見学習も行われつつある。
注)発見学習は、学習者にとって、乗り越える壁が高すぎることが多く、今までの答(知識)を教える方式から、ヒント(方向性)を提示する方式へと切り替えが必要で、新たに教師のファシリティター(援助者)としての能力が問われる。

発見学習論~学力のノエシス-ノエマ構造~

発見学習論~学力のノエシス-ノエマ構造~

  • 作者:江上 英雄
  • 発売日: 2017/08/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
再発見の発想法

再発見の発想法

  • 作者:結城 浩
  • 発売日: 2021/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)