脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その一)

3-2)小脳

3-2-1-1)小脳の構造
人の脳では、小脳だけでも1,000億以上の神経細胞がある。神経細胞は、情報処理に特化した細胞である。小脳が属している中枢神経全体の神経細胞の数は1,000億と2,000億の間(およそ1,400億個)と推定される。その7割が小脳にありとは驚きである。人の小脳では、約50万個の神経細胞で構成された一つの回路が、一個のコンピュータと似たような情報処理をする。そのコンピュータが、小脳内には3万個あり、全てが自動的に作動する。
なお、小脳は、脊椎動物ならどの種であっても大きさが異なるだけで同じ構造をしている。ということは、初期から完成度が高かったのだろうか。
3-2-1-2)人の小脳の階層的構成
人の小脳形成は、胎生の6ヶ月の終り頃には一応完成する。小脳の髄鞘形成は胎生7ヶ月頃から起こり、生後5~8ヶ月頃には完了する。
小脳の神経組織は、魚類から哺乳類に至る脊椎動物全般にほぼ共通した構造を持つ。しかし、全く同じというわけではなく、人の場合には、古い層に新しい層を積み上げる形で3層構造になっている。それによって、複雑さのレベルが決まる。
(1)原小脳(前庭小脳)は、前庭神経(平衡感覚を伝える)からの入力を受ける。大脳皮質経由ではなく、直接運動神経に伝わることで、体が傾くことなく無意識に微妙な運動調節が起こってスムーズに運動ができる。魚類、両生類の小脳ほほとんどこの層だけで構成される。
(2)古小脳(脊髄小脳)は、主に脊髄からの入力を受ける。鳥類、哺乳類でよく発達している。
(3)新小脳(脊髄小脳)は、大脳皮質からの入力を受ける。霊長類、特にヒトで発達している。
小脳と運動失調 小脳はなにをしているのか (アクチュアル 脳・神経疾患の臨床)
昆虫―驚異の微小脳 (中公新書)