脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その二)

3-2-1-2)人の小脳の階層的構成
人の小脳形成は、胎生の6ヶ月の終り頃には一応完成する。小脳の髄鞘形成は胎生7ヶ月頃から起こり、生後5~8ヶ月頃には完了する。
小脳の神経組織は、魚類から哺乳類に至る脊椎動物全般にほぼ共通した構造を持つ。しかし、全く同じというわけではなく、人の場合には、古い層に新しい層を積み上げる形で3層構造になっている。それによって、複雑さのレベルが決まる。
(1)原小脳(前庭小脳)は、前庭神経(平衡感覚を伝える)からの入力を受ける。大脳皮質経由ではなく、直接運動神経に伝わることで、体が傾くことなく無意識に微妙な運動調節が起こってスムーズに運動ができる。魚類、両生類の小脳ほほとんどこの層だけで構成される。
(2)古小脳(脊髄小脳)は、主に脊髄からの入力を受ける。鳥類、哺乳類でよく発達している。
(3)新小脳(脊髄小脳)は、大脳皮質からの入力を受ける。霊長類、特にヒトで発達している。
3-2-1-3)小脳の働きは
動物は、小脳がなくてもともかくも動くことができる。というのは、脊髄は、筋肉を直接支配して動き自体を生み出す。だから、筋肉や動き自体は、小脳とは直接的には関係ない。
また、小脳がなくても、動物は自発的に動こうとする。運動しようとする意志(随意)は、小脳ではなくて、大脳新皮質(前頭葉運動野)から起こる。大脳新皮質がなくても、脊髄や脳幹があれば反射的行動はできる。
小脳がないために起こる障害は、運動における複数の身体部分どうしの協調連携の欠如である。運動の協調とは、数多くの筋肉を同時に、巧みに操り、身体の各部分を有機的に組み合わせて運動を滑らかに技巧的に遂行させることである。つまり、小脳の役目は、複雑な運動の技巧性を高めることである。
小脳と運動失調 小脳はなにをしているのか (アクチュアル 脳・神経疾患の臨床)