脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-2)小脳 (その四)

3-2-3-1)小脳と運動
そこで採用された方式が、最初はコーチ付きのフィードバック方式で練習を重ね、慣れて来たら、フィードフォワード方式を採用するというやり方である。
つまり、脳が、技巧とか、速さが要求される運動を実行するに際して採用する方法は、初めの段階では、大脳新皮質主導でフィードバック制御で、経験を積み、知識を蓄え、型を修得して成功率を上げる方式を取る。その際に、小脳を使う。
小脳は、大脳新皮質主導のフィードバック制御方式を片っ端からモニターして、情報を収集する。収集した情報を元に学習して成功(完成)したパターン(プログラム化された行動様式)が獲得確立したら、その確立した行動様式から体の動きをあらかじめ、自動的にシミュレート(模擬行動)する。その結果得られた予測によって、体を先回りで動かす方式である。体が実際に動くよりも先に、小脳が体を動かす指令を出す。つまり、フィードフォワード制御をする。
3-2-3-2)小脳の役割
フィードフォワード制御方法だと、小脳にあらかじめ一連の行動を学習させ行動様式を修得させる必要がある。これが体で覚える訓練、練習である。
具体的な脳の活動で示すと、小脳は、大脳新皮質運動野(随意運動に関わる)と、脳幹や脊髄(筋肉に指令を出す、実行部隊の直接指揮官)のやり取りの間に入って、しかも感覚器官(情報収集係)を働かせ、目で見て耳で聞いて皮膚感覚も動員しながら、確認できる目標と、実行中の運動との誤差をはじき出して、その誤差分だけ運動を修正する役目を果たす。そして運動が成功した際にはその運動の手順をプログラムの形で修正貯蔵する。
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