脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 扁桃体 (その三)

3-3-2-4)扁桃体と他の脳部位との関係
上で扁桃体と側頭葉の連携を説明したが、更に敷衍して脳的に説明し直すと、扁桃体へは、あらゆる感覚連合野(内臓感覚も含む、つまり、身体内外)からの全情報が流れ込む。その情報をすべて統合して、さらに過去からの記憶情報(海馬からの記憶情報)とも照合した上で、生物学(生存競争)的な価値評価(快か不快か、好きか嫌いか、有益か有害か)を下すのが扁桃体の役割である。
注)扁桃体と海馬とは、同じ大脳辺縁系に属し、位置的にも近接しており、関係が深い。
扁桃体は、その後、視床下部(体内環境の管理人)や大脳基底核(運動野からの運動指令を受け取る)や脳幹(中脳、対外的運動、反射の管理人)に発信する。脳幹の背側の領域(中脳)に腹側被蓋野があり、扁桃体はそこへも発信する。
大脳辺縁系には、大脳皮質連合野から最終的に知性的に処理された感覚情報がフィードバックして入って来る。例えば、扁桃体(情動)を上位からフィードバックによって抑制するのが前頭前野(知性、理性)である。つまり、速さを信条とする扁桃体へは、前頭前野から、最高階層としての大所高所からの理性的判断の伝達と抑制的ブレーキが加えられる。
逆に、大脳辺縁系は、上位階層として、本能行動の内の体内態勢を司る視床下部(体内的情動反応を司る部位)を制御支配する。視床下部には情動反応のプログラムが内蔵されている。
このように、扁桃体は、他の脳部位と連携することによって、機能がどんどんと向上して多様化して行く。だが、それには、年数を重ねて経験を積み上げて、様々な神経回路との連携を果たす必要がある。
階層関係:前頭連合野(大脳新皮質)>扁桃体(大脳辺縁系)>視床下部(脳幹)
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