脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-3)大脳辺縁系 大脳辺縁系に属す主要脳部位 3-3-4)帯状回 (その三)

3-3-3-4)帯状回前部、前部帯状回、前帯状回
前部帯状回(24、32、33野)は、後部と同様、認知と情動のインターフェイス、相互作用、統合機能として働く。
前部帯状回は、背側部 (24野)と腹側部(32野)が含まれている前頭前野頭頂葉(空間情報)、前頭運動系(運動前野、補足運動野、前補足運動野)や前頭眼野(眼球運動の認知的制御、空間的注意)とも接続して、トップダウン情報とボトムアップ情報への制御の適切な割り当ての中心的役割を担う。
具体的に言えば、前部帯状回は、前頭眼野(大脳新皮質腹内側部)と連携して報酬行動の切り替えを行う。あるいは、頭頂葉(身体の位置情報)と連携して、痛みを体験する。それだけでなく、孤独感などの社会性痛みをも感じる。つまり、前頭前野と接している前部帯状回は、主に前頭前野と下位階層との間で「上下を行き交う情報の交通整理係」である。
ということで、帯状回前部は、言い換えると、積極性(行動化)の入り切りスイッチであり、つまり、トップダウン(能動性)とボトムアップ(受動性)の切り替えスイッチである。
例えば、帯状回の運動領域(帯状皮質運動野)(24、32野)は、大脳新皮質運動野の下部に接していて、運動の入り切りスイッチとして働く。
要するに、大脳新皮質前頭前野でまとめ上げた計画、目標を実行に移すべく、帯状回というインターフェイスを通じて、然るべき部門を総動員する。そのための窓口になっているのが、帯状回(前部)である。と同時に、不必要な情報を排除することをも受け持つ。あるいは、二つの脳部位が葛藤している場合に、帯状回前部が起動する。
これは、視床が、ボトムアップする感情情報の中継地として、感覚器官からの情報を大脳新皮質に送り出す検問所の役割と似ている。
注)一般的に、上位階層は、いくつかの下位階層から上がって来る情報を取捨選択したりそれらを統合したりする機能を持つ。それは、別の角度から言えば、情報の入り切りスイッチの役割である。
人間性のニューロサイエンス―前頭前野、帯状回、島皮質の生理学
情動と記憶