脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-4)前頭連合野、前頭前野 3-4-4-2-2)前頭前野の機能三区分

3-4-4-2-2)前頭前野の機能三区分
前頭前野を三区分(外側、内側、腹側)する。
(1)外側部は認知、実行機能。
外側部は、「ワーキングメモリー(作業記憶)」、反応抑制、行動の切り替え、プラニング(長期計画)、推論(論理的思考)などの知性(理性)の認知、実行機能を主に担っている。
外側部で行動に対する意思の決定が行われ、前部帯状回でその行動にふさわしい選択や準備が行われる。
外側部は、意識的に情報を操作処理する。といっても、勿論やはり無意識的処理の方が主だが。
空間情報(頭頂葉)と物体情報(側頭葉)とを受け取る。つまり、外界から来た情報が多く集まる。
外側部は、脳全体から幅広く情報を受け取る、情報収集統合係である。
外側部(特に右側)は、特定の活動に注意を向け、かつ持続的に遂行する役割を持つ。
階層的には、外側部は腹側部よりも上位に位置する。例えば、甘くて美味しいケーキだが、砂糖が多くて健康に良くない場合、甘くて美味しいは腹側部が(感情的)判断し、健康に良くないは外側部が(知性的)判断する。外側部が十分に成熟していれば、腹側部を抑えられる。外側部(特に左側)は、習慣化された行動を抑制する役割を持つ。
(2)内側部は、他者を知る心の理論、社会性(自己と他者との関わり)機能。
物や動物の擬人化に関わる脳部位は、内側前頭前野(心の理論)、上側頭葉(生物的運動)、前方側頭葉(人物同定と意味)、側頭頭頂接合部(視点の転換)が関わる。逆に、人を物体としか見ない場合には、内側前頭前野の活動は鈍い。
内側部では、後方部は自己をモニターして評価する機能を果たし、前方部は社会性に関わる。内側部内背側部は、他者の報酬に関わり、内側部内腹側部は、自己の報酬に関わる。また、自己目線で自己評価をする場合には、腹側部が関わり、他者目線で自己評価をする場合には、背側部が関わる。
(3)腹側(底辺)部は、扁桃体と相性が良く情動と関わり、動機づけ機能を持つ線条体(側坐核)へと軸索を接続させている。
注)腹側部は、眼窩前頭皮質前頭眼窩野前頭前野眼窩部とも呼ばれる。
腹側部は、「報酬」(物質的、精神的好ましい結果)に関わる。価値の高い報酬には強く反応し、低い価値しかない報酬には弱い反応をする。しかも、報酬を期待した時点から働き始める。ということで、行動を実行する前から腹側部は働くので、動機付けという意味に解される。最初の頃は、報酬が得られた時点で活性化するが、繰り返されると、報酬が得られると期待した時点(前倒し)で活性化する。
反応するのは、報酬だけではなく、罰(負の報酬)にも同じく反応する。報酬には、内側部が反応して、罰には外側部が反応する。
報酬を一般化すると、ある行動を更に続けたいと感じさせたり、逆にもうしたくないと感じさせる物や出来事や気持ち(マイナスの報酬)である。つまり、未来をより良い方向に導く物質的精神的なものを言う。扁桃体は、その都度その都度の価値判断であるが、眼窩部(腹側部)は、未来を見据えての過去や現在との比較しての価値判断をする。
ということで、眼窩部(腹側部)は、下位階層の脳部位と連携して、無意識下で、欲望、本能、衝動、感情的な決定過程に重要な役割を果たしている。

前頭前野

前頭前野

  • 発売日: 2020/07/09
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