脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 好奇心、意欲、動機 11-5-1)興味(関心)、好奇心

好奇心、意欲、動機
11-5-1)興味(関心)、好奇心
注意や興味(関心)に関わる脳部位は、前頭前野や頭頂連合野にある。ここから帯状回前部(インターフェイス機能)を介して注意(関心など)のトップダウン指令が、下位の感覚系領域(視床など)に送られる。その結果返って来る諸々のボトムアップ感覚情報を、注意部位が、今現在の目的(目標)に従って選び取る。
つまり、興味(関心)、好奇心が、注意の方向を決めるといっても構わないだろう。
注)私の妻が妊娠した時には、町を歩いても、電車に乗っていても、妊婦さんがやたらと目に付いた。今年は出産ラッシュなのかなと不思議に思えた。が、妻が出産した後では、町でも電車内でも妊婦さんを滅多に見かけなくなった。
対象に心が向く主体的な行動(好奇心、興味、意欲、注意など)は、随意なので注意の集中を要求する。注意の集中は、大脳新皮質の覚醒水準を高める。覚醒水準は、脳幹網様体から来る感覚情報を通じて大脳新皮質を刺激して活性化させる。かくて、好奇心から始まる知の好循環が生まれる。
11-5-2)好奇心は新規性を求める
だが、例えば、練習によって自動的にできるようになる内容だと、あるいは新規性(目新しさ)がなくなる事柄だと、高次領野(主に前頭前野)の活動は消え、小脳が中心となり感覚野と運動野の活動だけが残り習慣化する。かくて、好奇心、意欲の出番はなくなり、新たな獲物を求めることとなる。このようにして、おさな子達は、飽きたら新しいおもちゃを求め続ける。だが、これは心(脳、特に前頭前野)が育ちつつあることを意味する。
11-5-3)内発的動機づけ
動物(人を含めて)が行動を起こす場合、その動物には何らかの動機づけが働く。動機づけは、動物の行動の原因であり、そこには行動の方向性を定める要因と行動の程度を定める要因とが含まれている。
動機付けの内で、内発的動機づけとは、外から与えられる報酬ではなく、心の内部から沸き上がる好奇心や関心や欲求によってもたらされる動機づけである。
そのような内発的動機づけから動く条件は、
1)(知的)好奇心を持ち、
2)自分が中心(主体性を持って)となって、自分で課題を設定して、自発的に考え出し、問題解決しようとするという、自律性を発揮する気持ち(感情)そのものが、動機付けになる。
3)更に、それによって解決がもたらされると「自己有能感」「充実感」「達成感」などが得られる。これらは精神的喜びである。これは十分に大きな報酬になり得る。
つまり、自身の周りの環境(人や物や出来事など)に対して能動的に働きかけ、環境を自分自身の力で変化させた時に喜びや満足を感じる。この喜びや満足感を有能感と呼ぶ。これが、子供達に芽生えた証は、「自分でする」「僕が、私が、する」という心の叫びである。
11-5-4)内発的動機付けと脳部位
内発的動機づけとその変動には、前頭前野外側部と腹内側部そして線条体(側坐核)が重要な役割を果たしている、という。
注)自分自身への主観的な価値評価とそれに基づく意思決定とが、前頭前野腹内側で行われる。
注)前頭前野内で、後ろから前に行くにつれて情報処理がより高度でより抽象性(物質から精神へ)が高くなる。
前頭葉(知的好奇心)→線条体(側坐核が行動を駆動)→視床(フィードバック情報)→前頭葉(更なる好奇心)という連絡ループを通じて、予想より嬉しい結果を引き起こす行動を、脳はますます効率的に起こすようになり、期待外れな結果を引き起こす行動を脳は起こさなくなる。これが、やる気の出る行動と出ない行動とが区別されていく脳の仕組みである。失敗よりも成功を高く価値づけている。
だがしかし、前頭前野腹内側部においては、自己決定感が高い場合には、成功だけでなく失敗に対しても、積極(好意)的に価値づけている。というのは、失敗は、次に何をするべきかを教えてくれる、アドバイス(手がかり)でもあるから。