脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 11-7)知の行動化(知行合一)

11-7)知の行動化(知行合一)
(1)「前頭前野」が目標(計画)を作成して、
(2)やるぞというGOサイン(意欲)が出た時点で、積極性に踏み出す「帯状回前部」が前向きになって
(3)その目標が好きな事柄かどうかを大脳辺縁系扁桃体」が判断して、扁桃体もGOサインを出し
その判断が前部帯状回を経由して前頭前野にフィードバック情報を送り返し、そこでその判断をも統合された決定情報が、再度、前部帯状回を経由して扁桃体に伝える。
(4)同時に報酬(良い結果)を意識した(腹側線状体)「側坐核」も活性され、良い結果が出そうだと予期して行動化へと打って出る決定が
(5)知を行動化する「大脳基底核」に伝わり大脳基底核が作動する。同時に「視床下部」(身体機能の活性化)も戦闘モードに入る。
(6)かくて、大脳基底核の下位階層である「脳幹と脊髄」が、筋肉などの実行部隊に指令を出す。
だが、「分かっちゃいるけど、やめられない」という知行合一ができないのが世の常である。分かっちゃいるのは、大脳新皮質後部(言語的理解)であるが、やめられないのは、扁桃体(感情的判断)である。つまり、前頭前野(トップダウン司令部)が、自己内のあらゆる機能を完全掌握できていないで、下位機能(主に扁桃体)が、勝手(ボトムアップ)に行動化している姿である。

知性の精神化
11-8-1)政治
大脳新皮質は、前部と後部に分けられる。前部(前頭葉)の内、前頭前野は、未来を見定めて、計画を立てる部位であり、それを実行する部位(運動野)がその後ろに位置する。後部は、情報を集めて、分析した上で再統合し、高次の情報に高める。
それを政治世界に当てはめると、大脳新皮質前部(前頭葉)は、国会であり、大脳新皮質後部(後頭葉、側頭葉、頭頂葉)は、官僚(機構)である。その内で、前頭前野と運動野は、国会と行政機関である内閣府である。
つまり、政治とは、知性を精神化して、それを具現化することである。
11-8-2)哲学と宗教と科学
知性を精神化するとは、哲学することである。哲学するとは、あらゆる知を集めて、それを一つに体系化することである。体系化して、その主題を提示することである。本質とは、そういうことである。
哲学に関しては、デカルトは、「我思う故に我あり」を大前提として、哲学の出発点(中心核)とした。思うとは、言葉を整理して(論理)体系化することである。つまり、宇宙を言葉で秩序づける作業である。故に、科学するとは、哲学をすることである。異なる点は、根拠を提示するのが科学であり、言葉の整合性を取るのが哲学である。
デカルトは、我思うとして、哲学をしたが、仏教は、「我思わず、故に我無し」を、宗教の出発点とした。
思うとは、二つの要素がある。一つは、言葉の使用である。現象には切れ目がないが、言葉は、そのようなアナログの現象を、無理矢理デジタル化する。故に、言葉は、現象を正確に表現し切れない。もう一つは、思うとは積極的能動的行為である。その二つを止めることによって、宗教が始まる。
言葉は、人間だけのものである。しかし、宇宙は、人間だけのものではない。だから、哲学(言葉による体系化)では、更には科学だけでは、宇宙を体系化することはではない。