5)髄鞘化(ミエリン化)
このセクション「5)髄鞘化(ミエリン化)」では、脳の成長成熟の第一段階である、軸索の髄鞘化(ミエリン化)に限定して、話を進めて行く。
5-1-1)生物の生存環境
動物にとって、餌を取るために、また敵から逃げるために、外界(環境)から取り込んだ情報の伝導速度を上げることは文字通り死活問題である。ほとんどの生物は、一瞬の差が死に直結する状況に置かれている。まことに厳しい現実を生きている。そのため、進化の過程で、神経(情報の伝達と処理)系は、2つの仕組みを獲得した。
5-1-2)軸索の直径の巨大化
一つ目の仕組みは、伝達用線(軸索)を太くすることで、一度に通過する情報量を増やした。道路で例えれば、単線よりも二車線、二車線よりも三車線へと、情報通路を拡げた。多くの動物種は、この軸索の巨大化の方向へと進んだ。例えば、イカの軸索は、直径1mmであるが、哺乳類で1ミクロン(1,000分の1ミリ)程度である。この差は、千倍もある。
注)軸索は、神経細胞の一部で、情報を送り出す突起(配線)部分である。長いものでは1メートルもある。
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