脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

脳の階層構造的発生成長成熟 副題:脳と心(情報)の並行する発達順序 0)前書き

脳の階層構造的発生成長成熟
副題:脳と心(情報)の並行する発達順序

0)前書き

私には、三人の孫達がいる。彼らが、生まれたばかりの頃は、ごくごくと無心にミルクを飲み、手足をバタバタと動かし、後は寝てばかりであった。その後、よく泣き時たまほほ笑み。こちらに視線を送るようになり、やがて首が据わり、寝返りが打てるようになった。次には、座らせても姿勢が安定するようになった。更には、お腹を擦らずにハイハイができて、つかまり立ちをする。遂に遂に、立って一歩を踏み出した。感激の一瞬であった。

このように、できなかったのに、本人たちがしようと意識しなくとも、新しい行動(動作)が次から次へとできるようになるのは、何か理由があるからであろう。

ということがきっかけで、そのような、新しい行動ができるようになる仕組みをインターネットや書籍で調べてみた。それでその結果知り得た事柄をまとめた形でここで述べて行きたいと思う。
私は、脳にとても興味があるので、特に、「脳の中で」起こっている作業と、それを支える「仕組み」(システム)について、特に出来るだけ詳しく述べていきたい。

ということで、この本の大きなテーマは、
子供達が、
「新しい行動ができるようになる」「脳の成長成熟順序」の提示である。
更にもう一つが、それを支える
「(脳の)階層構造(ツリー構造)」である。言い換えれば、生物は、「個体発生は系統発生を繰り返す」、である。

脳の階層構造は、個人の脳の成長成熟の順序(個体発生)と同時に、動物の脳が、気の遠くなる程の長い長い歴史の中で、自然と闘う中でどのように進化して来たのかというその順序(系統発生)をも現している。

さわりを言えば、
受精後、胎児の脳(構造)が母胎内で形成されていく。これは、ビルの建設で言えば、ビルの大枠が組み立てられる段階である。赤ん坊は、脳の大枠が組み立てられた段階で誕生する。
生まれてから時々刻々と外装が施されて行く。これは脳で言えば、「髄鞘化」が施され行くことである。
次の段階は、内装が施され、家具や生活道具が配置される段階に入る。脳で言えば、これは経験を積むことである。経験を積むことで、脳には神経回路が縦横に張り巡らされる。この神経回路の複雑さが、その持ち主の能力の高さを表わしているとも言える。

私は、孫達の将来、未来に大変関心がある。幼い孫達に輝かしい未来に備えさせるのは、公的なまた私的な教育である。教育は幼い孫達へ送る無形の財産だと思っている。家庭にあっては、学校では経験しえないような、様々な新しい体験を重ねさせることだと思う。

教育とは、子供達の中に潜在している能力を如何に引き出すかが課題である。その課題とは、一言で言えば、潜在構造(能力)の顕在化、である。経験させるとは、子供達の中に潜在する、眠っている設計図に素材を与えて、顕在化させることである。だが、顕在化させようとしても、時によって、できる事柄、できない事柄がある。それについての「根拠」をできるだけ提示して行きたいと思う、特に脳に関して。
この本は、子育てをされようとしておられる、ご両親、お孫さん達の未来に深い関心を持っておられる祖父母の方々、教育に携わっておられる先生方に読んで頂ければと、思っている。

ということで、脳の個体発生的発達と、系統発生的進化を、脳を中心軸に据えて、解説、説明することに注力して行きたいと思う。

それでは、今からその建設現場をご案内させていただきます。

問いからはじめる発達心理学 (有斐閣ストゥディア)

問いからはじめる発達心理学 (有斐閣ストゥディア)