脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 10-6)知性とは

10-6)知性とは
ある男性が、脳腫瘍で左右の前頭前野が手術によって切除された。知能が高かったその男性は、手術後も、知性レベルにほとんど変化はなく、記憶も損なわれず、言語活動や運動能力にも変わりがなかった。要するに、IQは、前頭前野切除後も低下していない。
この10)セクションのテーマ(主題)として、知性、言語、思考、意識という単語を掲げた。それらを繋いで文を作ると、知性とは、意識上で、言語を用いて思考する作業と言える。
では、知性とは言語を用いなければならないのか。言語を用いないなら知性ではないのか。それは違う。言語を用いるのは知性の一つに過ぎない。ならば知性とは何なのだろうか。
「知性」とは、「大脳新皮質で高度に処理された感覚情報を駆使して表現する能力や行為」だと言える。例えば、音楽、絵画、彫刻、造園、歌、手芸、ダンス、将棋、文学、などなど、多種多様な文化的表現手段が揚げられる。
音楽では、聴覚から入った音声が、単音や複合音、具体的には、和音、更には協和音、不協和音、更にその上に、旋律、さらにはリズムの加わって全体的響きとしての音楽が形成される。人の脳には、これを生み出す能力も、これを鑑賞する能力も持ち得ている。これは、音を多層的に高い階層構造に組み上げる能力を意味する。
大脳新皮質には、上で揚げた例以外にも、多種多様な知性的表現手段を可能にする潜在的可能性が眠っている。これから先も、新しい知性的表現が発明され、人々の心を豊かにして行くだろうと確信している。
ただ言えることは、言語的知性的表現ではなくとも、他人への意思伝達には、言語が大きな役目を担い続けるだろうとは思える。つまり基盤には言語が必要とされると。