脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 思考(言語の進化:コミュニケーション言語⇒独り言⇒思考) 10-4-1)意思疎通言語⇒独り言⇒思考 

思考(言語の進化:コミュニケーション言語⇒独り言⇒思考)
10-4-1)意思疎通言語⇒独り言⇒思考
言語は、外界(社会)に向けては、コミュニケーションの手段である、と述べた。内界(心の中)に向けては、思考の手段である。考えるとは、内的作業である。とは言え、図式を描いたりして、外化させることも多いが。
幼児は、思考の前段階として独り言を言いながら、つまり、自らがしゃべり自らが聞きながら、思考する。つまり、側頭葉(聞く機能)と前頭葉(話す機能)とが、まだ統合されていない段階である。これは、他人との会話と、純粋な内的思考との中間期(中間形態)であろう。
自らとの無言の対話をするためには、外界からの、また身体内部からの感覚的な情報をできるだけ阻止しなければならない。でなければ、ボトムアップ感覚情報とトップダウン思考言語とが、脳内で入り混じり収拾が着かなくなる。
更には、思考は、考える中身、テーマを定めて、必要な情報を脳内から呼び出して、秩序付けて並べる必要がある。そのような思考に中心的に関わる脳部位は、前頭前野である。
10-4-2)シミュレーションとは
シミュレーションとは、想定される条件を取り入れて、実際に近い状況をつくり出す模擬実験である。見えない行動の結果を見える化することである。思考とは、それを脳内で実施する、脳内シミュレーションである。
思考は意識というまな板の上での作業
10-5-1)意識は社長職
生の感覚情報は、例えば、視覚や聴覚などは、大脳新皮質各種感覚野で処理されて、更には情動(扁桃体)や思考(前頭葉)への素材として変換すべく大量の作業を施される。
意識は、それらの作業段階の内で、志向性を持つ高次情報処理段階である。意識は、比喩的に言えば、最終的報告書を読む社長職である。様々な情報が、意識に上がって来る時には、高度に加工処理が施されている。比喩的に言えば、店から買った食材が料理として出されている段階である。生の食材は見せてもらえない。
10-5-2)意識と注意と脳部位
意識と注意は、7)「心の成長発達」のセクションで言及したが、感覚情報が脳の情報処理の中で、下位階層から順次自動的に情報処理されて上がって来る過程に対して、能動的に情報を求めて選択し統合して、目的の行動との間に整合性をもたらすべく実行するトップダウン的情報処理方式である。
この過程を脳的に言えば、感覚情報は、視床を介して大脳新皮質に送り出すことで自ずと大脳新皮質を活性化させ、目覚め状態を作り出す。この段階は、大脳新皮質にとって、ただ門戸を開いて情報を入るに任せているボトムアップ型受動的意識状態である。ボトムアップ型意識の中枢は、視床(と脳幹網様体)である。網様体は、大脳皮質の神経細胞(ニューロン)に信号を送って、刺激を与えることで意識状態を生み出す。その網様体自身も、様々な感覚からの情報によって活性化される。
その意識状態にあって思考の段階は、トップダウン的注意(意識)が働いて、何かに心が向かう志向的意識状態である。この段階で大脳新皮質が積極的に関わる。つまり、積極的志向性(注意)は大脳新皮質前頭前野が生み出す。