脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 10)知性、言語、思考、意識 言語 鳥のさえずりと言語 10-3-5-1)鳥と人の共通点 

鳥のさえずりと言語
10-3-5-1)鳥と人の共通点
人と同じように、多種多様な音(声)を出すことができて、個体同士が声でコミュニケートするのは、鳥類の鳴禽類だけである。といえば、たちどころに、犬や猿も多様な鳴き声を持ち、声に感情を乗せる、と反論が来そうだ。であっても、犬や猿では、鳥のような言語(感情ではなく知性的意味を含む)に近い単語の使い分けはできない。
ということで、人と同じような言語を使用できる理由を考えてみた。まず人と鳥の共通点を挙げと、
1)人と鳥のみが完全な二足歩行をしている。鳥の前足は羽へと完全変換されているので、逆に四足歩行は不可能だが。だが、人は直立できるが、鳥の場合は、45度程度の傾斜までしか体を起こせない。
2)その結果、人も鳥も良く共鳴する長い気道が真っ直ぐに伸びている。これは、頭が立つ(上に向く)ことによって可能になる。結局は、ニ足歩行と連動する。だが、逆に、二足歩行しても言語らしき表現機能を持たない動物(例えば、カンガルー)も多い。
言語表現機能を持ち、かつ人の言葉をまねすることができるのは、鳥の内でも、インコとオウムと九官鳥だけである。
10-3-5-2)鳥の言語構造
鳴禽類が鳴く歌には、構造(外的表現)があり、しかも内容(意味)もある。例えば、アカカナリアは、鳴くのはオスだけで、鳴く目的はメスへの恋歌である。ここまでは、多くの動物にも可能である。だが、アカカナリアは、音素の組み合わせでシラブル(音節)を作り、そのシラブルを集めてフレーズ(単語)を作り、それをさまざまに並べて歌(文章)を作る。これは人の言語とほぼ同じ構造である。といっても、アカカナリアと人とでは、言語の階層の高さにかなり違いがあるけどども。
コトドリは、物真似名人で、鳥の鳴き声、人の声はもちろんのこと、車のクラクション、チェンソーの起動音、カメラの連写ドライブ音などまで真似する。
鳥がこのようなことができるのは、大脳皮質運動野が、呼吸と発声の意図的な制御が可能だからである。つまり、延髄にある発声中枢を大脳皮質運動野が直接制御することができる。この機能は、鳥と人しか持たない。
鳥の内には、単語だけではなくフレーズをも作るものまでいる。それはどういう目的があるのだろうか。多分、雄による雌への優秀さのアピールであろう。だから、構造と内容があっても、使用範囲は限られ深い意味は込められていないようだ。つまり、多様な表現力を持つが、深い内容は込められていない。人間が、言語に深い意味を乗せられる機能については、後ほど説明する。
10-3-5-3)音の左右脳への振り分け
一般には、言語音は、左脳に振り分けられ、音楽、機械音、雑音は右脳に振り分けられる。
ところで、日本人の場合には、母音、泣く笑う嘆く声、虫や動物の鳴き声、波、風、雨の音、小川のせせらぎなどの自然音、尺八や三味線などの邦楽器音は、言語と同様の左脳で聞く。しかしながら、西洋人は楽器や雑音と同じく右脳で聞く。
10-3-5-4)地と図
これは、地と図という区分けではないだろうか。地とは、背景で、図とは、前景である。私達は、あふれる程の情報に対して、地と図に、無意識的に区分けしている。図に関しては、更に分析を進めるが、地だと判定された情報は詳しく分析されずに流し去られる。