脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 注意と意識(能動性、受動性) 

注意と意識(能動性、受動性)
11-4-1)脳の働きと注意
脳は、断片的、要素的な情報から、部分的な統合を繰り返しながら、複雑な総合的、統合的な全体像を形成してゆく。あたかもジグソーパズルを完成させるかのように。
注意は、そのように全体像を形成して行く途上で、不必要な情報を排除し、必要な情報だけを選択する(能動的な)機能である。
11-4-2-1)二種類の注意
その注意機能には二種類ある。
(1)(外因性、瞬間的、受動的)ボトムアップ注意
ボトムアップ注意は、無意識的に行われる、自動的で瞬間的に生じる、強い刺激によって誘発される、定位反射(刺激対象に顔や体を向ける無意識的反射行動)である。危険性の高い事柄に際して、強力に突発的に割り込んで来る。あるいは、外にある、または内から上がって来る強い刺激や欲求に押されて、思わず向かう注意である。
(2)(内因性、継続的、焦点的、能動的)トップダウン注意
ボトムアップ注意が無意識的であるのに対して、トップダウン注意は、意思に基づいて、意識的に、従って随意で引き起こされ、精神的な努力を求められる注意機能である。
11-4-2-2)注意とその際に働く脳部位
外因性瞬間的無意識的ボトムアップ注意は、後頭頂葉視床枕とで発せられる機能である。
注)視床枕は、大脳新皮質の視覚野と密接に連携している。注意を向けると、視床枕で、注意対象に関する視覚情報が処理され、それ以外の物に関する視覚情報が除外される。
他方、内因性継続的焦点的トップダウン注意は、前頭前野(帯状回前部)が指示を出す。トップダウン注意は意識的なので、精神的な努力を必要とする。
例えば、本に向けていた注意が、近くでの突然の大きな音によってその注意が奪われるとすれば、本への意識的トップダウン注意が、大きな音への無意識的ボトムアップ注意へと瞬間的自動的に切り換わったと言える。
注)脳内では、常に情報による勝ち負け(生存)競争が繰り広げられている。勝利した情報が行動化を勝ち取る。この場合には、上位か下位かは関係なく、勝った情報が実行を勝ち取る。
11-4-2-3)注意と帯状回前部
例えば、本の中の文字を受動的に見る(受動的意識段階)際には、帯状回前部は活動しない。ところが、新しい単語を考え出したり、特定の目標を注目するときには活動する。つまり、前頭葉の中心線に沿った帯状回前部は、トップダウン型能動的選択的注意システム(の中心)として働く。能動性注意には帯状回が働く。
逆に、出現頻度の低い目標を検出するために、単語のリストに注意するとき、主観的な感覚としては、「頭の中の思考や感覚を空」にしている、つまり、ぼんやりと視線を定めずに入って来る情報を眺める感じである。流れて来る情報の内で、引っ掛かる物が来たら、それに注意を向ける。この主観的な意識を空にする(受動的意識段階)では、帯状回前部の活動の低下が同時進行する。