脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第三章:情報(知)の発達と階層性 11)精神、性格、意志、注意、理性 自意識(自己意識、自我意識)から内省へ 11-3-1)自意識、自己意識、自我意識 

自意識(自己意識、自我意識)から内省へ
11-3-1)自意識、自己意識、自我意識
時々に刹那刹那に上がって来る欲求に従って動くのでは、とても浅い動きでしかない。深い、意味深い行動を選び取るには、自身の中に存在する知的資源を知らねばならない。それには、自身の心の中に潜って探索をする必要がある。その方法の第一段階が、自己意識である。
自己意識や自他の区別には、右半球(右脳)が主要な役割を担う。前頭前野(その内でも最先端)が、上位階層レベルの認知過程と深く関わっている。
もう一人の自分がいて、自分のことを上から客観的に見て、自分自身を制御する。これを「メタ認知」という。行動する主観的自分を、一段上の階層から観察(モニター)する客観的自分(自意識、自己意識、自我意識)を持つことで、自己に関するメタ認知が働く。
生後1歳半から2歳頃になると、当惑する、嫉妬するなどの自己を意識した行動(感情)が表れる。つまり、他人の目を意識する。他人に自分がどう映っているのかが気になる。幼児は2歳前後に自己意識(客観的自分)を獲得し始める。これは、ゾウやイルカや、チンパンジーやオランウータンなどの大型類人猿は持つが、ニホンサルは持っていない。
この自意識とは、初期には、他人から見られている、注目されていると感じる(意識が働く)ことである。だから、動作がぎこちなくなる。外界に向けられる意識だけではなく、外(対象)に向かった意識が鏡に当たって跳ね返り、その鏡上の自分自身にも同時に向けられる上下二層の意識である。
注)思春期になると、多かれ少なかれ自意識過剰気味(自分は他人からどう見られているのだろう、自分の行動は他人からどう感じられているのだろうか)になる。これが自分を振り返る大きな動機と成り得る。
11-3-2)反省から内省へ
自意識(他人から自分はどう見えているのか)から発展して、自己の感覚や感情や動機など、自分が現在体験している事柄に注意を向けることができる「反省」「内省」(自分の心を知ろうとする働き)がある。この外に向かっていた自意識から、更に発展して自分の内面に向かう内省は、外に意識が向かう自意識(他人には自分がどのように見えているのだろうか)よりも高次な機能(他人からどう見えているかよりもより客観的に心の中を探索する機能)である。自分に対する他人の態度から自分自身を判断することから、自分の内面(心の中)を直に探索する行為が反省、内省である。
しかし、それが可能になるには、脳幹網様体(内省のために外界情報を遮断する機能を持つ)の完成を待たなければならない。更には、前頭前野と連携しなければなしえない。脳部位で言えば、前頭葉眼窩前頭皮質が、実際の行動と予測行動とを比較検討する。また、他者目線で自己評価をする場合には、背側部が関わる。どちらにしても、内省は前頭前野の機能である。
5、6歳頃から、周囲の状況と自己の能力を考慮して起こりうる事態を予測するなど、いくつかのメタ認知的機能について成人と同様の能力を持ち始める。