脳の階層構造的発生成長成熟

脳と心(情報)の並行する発達順序

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-5)神経回路の成長

6-5)神経回路の成長 成人に達すると、1個の神経細胞は、シナプスを介して、平均的には他の1,000個の神経細胞とつながりを持つようになる。 今成人(20歳)のシナプス形成を基準として考え、それを100%とする。3歳頃は、外世界での経験をそのまま取り込む模倣に…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-4)神経回路の重層性

6-4)神経回路の重層性 脳全体で1,000億個を大きく超える膨大な数のニューロン(神経細胞)が、個々に独立して機能を発揮しているのではなく、お互いに軸索を伸ばし、シナプスでつながりを持ち合って、神経回路を形成している。その神経回路同士が更に合体して…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 神経回路の形成と成長発達

神経回路の形成と成長発達 6-3)神経回路の形成とは 神経回路の形成とは、神経細胞同士のシナプス(接続部)形成であり、それは神経細胞の組織化(集団化)でもある。なお、シナプスとは、(神経)情報を出力(発信)する側と入力(受信)される側の間に形成された、情…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-2)神経回路の先天性と後天性

6-2)神経回路の先天性と後天性 脳の機能(働き)は、単独で機能することはなく、必ず上で述べたように構成された神経細胞のネットワーク(神経回路)により担われる。その神経回路は、早くも胎生期に遺伝的プログラムによりごく大まかに形成され始める。 特に、…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 6)神経回路(ネットワーク) 6-1)大脳皮質と神経回路

6)神経回路(ネットワーク)6-1)大脳皮質と神経回路 神経回路とは、個々の神経細胞が軸索を伸ばし、他の多くの神経細胞とシナプスを介して結合した、神経細胞の集合体である。 大脳皮質には、80個程度の神経細胞で構成されるミニ円柱(コラム)構造(神経回路)が…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行

5-9-2)随意運動に関連する主要な脳領域は、大脳新皮質だけではなく、小脳、それと大脳基底核である。とは言っても、小脳と基底核は無意識的に作動するが。 なお随意とは、自分の意志に従って、ということである。随意運動は、必ずしも外的な感覚刺激要因によ…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 大脳新皮質運動野(随意運動)

大脳新皮質運動野(随意運動) 5-9-1)随意運動に関する神経系(大脳新皮質運動野:前頭葉後部)の髄鞘形成は、出生時にはすでに始まっており、ピーク状態は1歳半頃までで、完成するのは約2歳である。 随意運動の指示を出すのは、大脳新皮質前頭葉運動野であり、そ…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 高次運動系 小脳(複雑なプログラム駆動型運動系)

高次運動系 小脳(複雑なプログラム駆動型運動系) 5-8-1)小脳系の髄鞘形成は、胎生7ヶ月頃から起こり、誕生後5ヶ月~8ヶ月頃に完成する。驚くことに、小脳は、大きさ的には、大脳の10分の1しかないのに、大脳よりもはるかに多くの神経細胞がある。つまり、脳…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 脳幹網様体(覚醒、意識)

脳幹網様体(覚醒、意識) 5-7)脳幹網様体は、下は(1)脊髄から始まり、(2)延髄と(3)橋と続き(4)中脳まで伸びており、意識という覚醒系に重要な働きをもたらす。脳幹網様(体賦活系)が損傷を受けると、意識を失って眠り込む昏睡に陥る。 大脳の奥底にある、脳幹…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 5-6-2)大脳新皮質

5-6-2)大脳新皮質 大脳皮質は髄鞘化が遅いが、生後3~4カ月頃、視神経から視覚中枢である大脳新皮質後頭葉に向かう白質の髄鞘化ができる。その頃には頭頂葉の皮質下の白質の髄鞘化ができつつある。 注)視床から大脳新皮質への投射の髄鞘化は、 胎生5ヶ月頃か…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 脳梁

大脳新皮質(前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉) 5-6-1)右脳と左脳を結ぶ脳梁 新生児の場合、左半球(左脳)と右半球(右脳)を結ぶ脳梁神経は、未成熟でほとんど分離している。両者間の結線(神経線維の髄鞘形成)は漸進的速さであり、脳梁の後部から前部に向かって…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 大脳新皮質感覚系 聴覚と視覚

5-5-2)聴覚 聴覚の神経系には、胎生7か月になると聴覚が完成する。母体内に響く音だけでなく、おなかの外から響いてくる音(音域にかなり制限がある)をも聞き取ることができるようになる。視覚系と同じように、出生直後から髄鞘形成が始まるが、側頭葉の一次…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 大脳新皮質感覚系

大脳新皮質感覚系 5-5-0)一次感覚野から髄鞘化 体性感覚、視覚、聴覚などの感覚情報が、最初に大脳に入る一次領域(一次感覚野)やその近くの領域は早くに髄鞘化される。大脳新皮質感覚野は、一次感覚野から数次感覚野を経て高次感覚野へと情報が高度に集約さ…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 大脳辺縁系(情動)

大脳辺縁系(情動) 大脳の髄鞘形成は大部分が生後に始まる。 5-4-1)帯状回 情動の中枢となるのは、扁桃体であるが、それと結び付きが強い大脳辺縁系の帯状回に髄鞘形成(髄鞘化)が起こり始めるのが、誕生後2~3ヶ月目ぐらいであり、10ヶ月目頃には、帯状回の髄…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 感覚(運動)系(脊髄と脳幹を中心として) 5-3-3)脳幹

5-3-3)脳幹 胎生5ヶ月頃には脊髄や脳幹の軸索が髄鞘化し始める。生後2歳頃までに、末梢神経(体性神経)の髄鞘化は完成している。胎児期(誕生前)に下部脳幹まで髄鞘化が完成しており、上部脳幹の髄鞘化が生後上方向へ進む。 生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 脳部位や機能別髄鞘化の進行 感覚(運動)系(脊髄と脳幹を中心として)

脳部位や機能別髄鞘化の進行 感覚(運動)系(脊髄と脳幹を中心として) 5-3-1)感覚性神経と運動性神経 各種感覚器官から中枢へと向かう求心性(感覚性)神経や、系統発生学(生物進化の歴史)的に古い領域では髄鞘化が早い傾向がある。例えば、脊髄神経には機能的に…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 反射行動から随意運動へ

反射行動から随意運動へ 5-2-3)赤ん坊は、運動系の神経の髄鞘形成(髄鞘化)が進むに従って、寝返り、はいはい、立っち、歩行と、次から次へと運動機能を獲得して、2歳頃までに、基本的、要素的な運動機能が確立してくる。 5-2-4)1歳~2歳で発生する、指先…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 5-2-1)胎児期(誕生以前)の髄鞘化

5-2-1)胎児期(誕生以前)の髄鞘化 胎児期4~5ヶ月で脳神経の髄鞘化が始まる。具体的には、胎児5ヶ月頃からは脳幹部(いくつかの脳部位の集まりなので全体が同時進行ではないので既に部分的には開始されている)や脊髄(脳幹よりも取り掛かりは早い)の軸索がミエ…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) 髄鞘化の形成される順序

髄鞘化の形成される順序 5-2-0-1)深部(下部)から表層部(上部)へ 神経細胞の髄鞘形成の開始時期は、部位によって大いに異なる。一般に、深部の白質に始まり、表層部の白質はそれよりも1~2ヶ月程遅れる。髄鞘形成が完成するのも深部ほど早い。つまり、底から…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) (その二)

5-1-3)髄鞘化 もう一つの仕組みを脊椎動物が採用した。それは、軸索の髄鞘(ミエリン)化である。それによって無髄(髄鞘化されていない)神経線維よりも、同じ太さならば、五倍から百倍も更には数百倍も伝達速度が速くなる。つまり、髄鞘化の最大の目的は、単位…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 5)髄鞘化(ミエリン化) (その一)

5)髄鞘化(ミエリン化)このセクション「5)髄鞘化(ミエリン化)」では、脳の成長成熟の第一段階である、軸索の髄鞘化(ミエリン化)に限定して、話を進めて行く。 5-1-1)生物の生存環境 動物にとって、餌を取るために、また敵から逃げるために、外界(環境)から取り…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-3)胎児の脳

4-3)胎児の脳 母体内の胎児の脳が、全ての胎児で定まった構造に出来上がっていくのは、脳を形成する設計情報が遺伝子に全て書き込まれているからである。その遺伝情報が、流れ作業のように次から次へと順序立って現れ出(発現)して行くからである。 4-4)脳の…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-2-3)第二段階は神経回路(網)の形成

4-2-3)第二段階は神経回路(網)の形成 髄鞘化の次の段階が、「神経回路の形成」である。言い換えると、 シナプス(接合部)形成=神経回路の形成=神経細胞の組織化(集団化)である。 個々の神経細胞は、各自から線(軸索)を一本伸ばして、お互いにシナプスを介して…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-2-1)二段階の成長成熟 4-2-2)第一段階は髄鞘化

4-2-2)第一段階は髄鞘化 脳内では、構造が出来上がってまず最初に取り掛かる段階は、神経の「髄鞘化(エミリン化)」である。つまり、個々の神経細胞の成熟である。具体的に神経細胞が成熟するとは、神経細胞本体の成熟ではなく、そこから伸びる軸索(神経線維)(…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-2-1)二段階の成長成熟

4-2-1)二段階の成長成熟 さっそく本題に入って行くが、脳や神経は、誕生時には構造的にはほぼ完成しているのに、なおかつ未完成、未成熟とは、どういうことだろうか。その答としては、成長成熟は、次の二段階を踏んで発展して進んで行く、ということである。…

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟 4)脳の成熟順序 4-1)脳は成長成熟する

第二章:脳の発達(個体発生)、二段階の成熟4)脳の成熟順序4-1)脳は成長成熟する 前書きで述べたように、生まれたばかりの赤ん坊が、新しい行動が次から次へとできるようになるのは、結論から言えば、脳の成長成熟による。とはいっても、勿論行動に移すために…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-4)前頭連合野、前頭前野 3-4-4-2-3)前頭前野を更に細分化、五区分

3-4-4-2-3)前頭前野を更に細分化、五区分 上の三区分と被る区分でもあるが、外側を更に背側と腹側とに分け、内側をも更に背側と腹側(これは三区分の腹側と同じ)とに分け、新たに前頭前野内の前頭前野とも言うべき前頭極を加える。 (1)背外側部、 (2)腹外側部…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-4)前頭連合野、前頭前野 3-4-4-2)前頭前野の機能分化

3-4-4-2)前頭前野の機能分化 3-4-4-2-1)脳部位の位置関係 上では前頭前野の情報面での全般的な役割を述べたが、ここでは、前頭前野を機能別に分けて述べたい。 その前に、前頭前野内での脳部位の位置関係を説明すると、 (1)より前方の部位はより抽象的かつ高…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-4)前頭連合野、前頭前野

3-4-4)前頭連合野、前頭前野 3-4-4-1)前頭前野と情報 前頭連合野(前頭前野)には、全ての感覚情報と体内情報が集まる。そういう点から、前頭前野は、大脳新皮質の他の脳部位よりも階層が上であることがわかる。 前頭前野に入るそれらは、高度に加工処理された…

第一章:階層構造、脳の階層性(系統発生) 3-4)大脳新皮質 3-4-3-1)ミラーニューロン

3-4-3-1)ミラーニューロンとは 前頭葉運動前野と頭頂葉の接する部位など複数部位に、「ミラーニューロン」が存在する。それは、他者の行動を見て、まるで自分がそれと同じ行動をとっているかのような反応をする、鏡の向こうに映る相手が自分であるかのような反…